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少しだけ腕の力を緩めて、悠真が咲の顔を覗き込む。
頬は涙で濡れているのに、咲の表情はどこか幸せそうだった。
「……泣き虫なの、変わってないな」
からかうように言うけれど、その声は優しくて。
「泣き虫じゃありません……っ」
そう返す声も震えていて、笑いながらまた涙がこぼれる。
悠真はそんな咲の頭をそっと撫で、そして一瞬だけ視線を落とした。
「……妹ちゃん」
呼ぶ声はかすかに掠れていて――次の瞬間、そっと距離が近づいた。
イルミネーションの光が揺れる中、唇が触れる。
短くて、確かで、温かなキスだった。
「……これからは、妹としてじゃなくて。俺の、大事な人として」
胸の奥に灯る熱が、咲の全身を包み込む。
(……夢じゃない。ずっと望んでた瞬間なんだ)