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うめぼっち

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──その後、皆様のご助力を得て火傷の治療は終わった。途中、藤吉君の意識も回復して初めこそ泣いていたが、包帯を足に巻く頃には口を硬く結んで涙を堪えていた。
火傷の範囲はやや大きかったものの、眼科の中には一通りの医療道具が揃っており、清潔な水、ガーゼ、消毒液、包帯はしっかりと完備されていた。
そして事務員の方が持っていたワセリンで皮膚の保護、湿潤環境の維持が出来た。
出来るだけの治療はした。きっとケロイド状態などにはならないだろう。
このあとは患部を清潔に保ち、ガーゼを変えて、新しい皮膚が再生するのを待つのみ。
念のために頭部に異常はないか、ちゃんとしたお医者様に診て貰うようにと家族に伝えている。
私への診察料は要らないが、眼科で使用させて貰ったものだけは支払うという事で、事務員の方が納得の行く形で最終的に場は丸く収まった。
治療を終えた藤吉君はリヤカーの上で母親に抱きつきながらも、最後は私に手を振ってくれた。
藤吉君の家族達は何度も私と事務員の方に頭を下げて、最後は明るい顔でまたリヤカーを引っ張って、ガラガラと車輪を元気よく回して帰路についた。
一家の後ろ姿を見送りつつ、これで良かったと思う。
夜の暗がりも、あの家族達を優しく包んでくれているような気持ちになる。
笑顔で家に帰れる喜びは、何事にも変えられない尊いものだろう。
その一方でクリス様が、事務員の方に名刺を渡していたのを視界の隅に見えた。
そっと横目で見ると密やかに「使用したもの以外に損害があれば、請求書を送ってくれ」とクリス様の声が聞こえた。
事務員の方がリヤカーの遠ざかる車輪の音に紛れるように、ひっそりと口を開いた。
「はい。一度先生に相談してから、連絡させて頂きます。でも、少年が無事でよかった。私はもう一度戸締りを確認してから帰ります」
と、最後には苦笑していた。
事務員の方のその言葉を聞いて、やはりご迷惑をお掛けしたことには違いない。改めて謝罪しようとしたら、クリス様にガシッと腕を掴まれた。
「マナ、謝罪はいい。このマダムは納得している。君は胸を張れ。マナはヤブ医者なんかじゃない」
「クリス様──」
クリス様の言葉に目をぱちくりする。
急にクリス様は私への態度を変えたと言うか……認めて下さったかのような対応に戸惑う。
私は何か特別なことをしただろうかと、夜でもきらめくクリス様の赤い瞳を見つめてしまうと、事務員の方がコホンと咳払いをした。
思わず事務員の方にぱっと振り向くと、女性は柔らかく微笑んでいた。
「では、《《先生》》もお疲れ様でした。これで私は失礼します」
「……先生?」
誰のことだろうと思っている間に、事務員の方は静かに眼科の中へと入って行き、ぱたんと扉が閉まった。
残されたのは私の疑問と静かな夜。
私の後ろをカラカラと人力車の音が聞こえて、道をおっとりと歩きながら、クスクスと笑う洋装姿の男女が横を通り過ぎる。
その男女の姿を見て──我に返った。
「はっ。クリス様っ。そ、蒼波様はリストランテで待ち惚けになっているのでしょうかっ。どうしましょう。取り敢えず土下座をして、ですねっ、あぁ、お礼! クリス様もご協力頂き、誠にありがとうございましたっ」
私は蒼波様の約束をすっぽかして、せっかく女中の皆様に着付けて貰ったドレスや髪をぐちゃぐちゃにしてしまったと言う、事実に肝を冷やした。
コメント
1件
第27話、めっちゃ良かった…! 藤吉君が最後に手を振ってくれたシーンでじんときたよ。あと、クリス様が「マナはヤブ医者なんかじゃない」って言ったところ、ガチでグッときた。ようやく認められた感あるよね。事務員さんの「先生」呼びも熱かった🔥 蒼波様との約束すっぽかしちゃったマナの焦り方、可愛すぎて笑ったわwww 次どうなるんだろう!