六年生の夏、彼から一緒に花火大会に行こう、穴場があるんだ、と誘われた。
今までは特に一緒に行く相手がいなかったので、一度も行ったことがなかったため誘いに乗ることにした。
彼に連れられて小高い丘に着いた私は、そこで生まれて初めて花火というものを見た。
轟音とともに闇の中に突然咲く花に、私は思わず感嘆の声を漏らした。
不意に彼の方を見てみると、彼も呆けたように空を見上げていた。
色とりどりの光が反射してきらきらと輝いた瞳は、小さな宝石のようだった。
同じように会場で空を見上げるクラスメイトたちを見つけると、お互いに小学校の感想を話し出した。
「ひどいところだったね。」
「将来、何の役にも立たなさそうだな。」
「ほんと、反面教師にすらならなさそうだね。」
「将来か、十年後はどんなふうになってるんだろうな。」
「今からだと二十二歳だね。いろんなことができるようになってる。」
「あの人たちより立派になってるといいなぁ。」
「結婚とかもしてるのかな。」
「お互い、売れ残ってないといいけどな。」
「そうだね。」
「でも…もしお互いまだ売れ残ってて、十年後、もしまたここで逢えたら、一緒になってくれませんか?」
普段使っていない敬語と、帽子を深くかぶりなおしたところから、彼が照れているのがよく分かった。
「なんですかそれは…まぁ、いいですよ。」と、私も敬語で返してみる。
「約束だぞ!」と言いながら彼は指切りをせがんできた。
私もそれに応じて、お互いに約束した。
よく晴れた夜空に、二人の歌がこだました。
その後、私は親の都合で転校することになり、彼とは離れ離れになるとは知らずに。