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音楽が流れているのに、誰一人、心から踊れていなかった。
フォーメーションは崩れ、
目線は合わず、
空気だけが重く沈んでいる。
「……ストップ」
トレーナーの声が響いた瞬間、
全員が息を吐いた。
疲労とかじゃない。
感情の疲れだった。
沈黙を破ったのは、ルナだった。
「……このまま続けても、意味、ありますか?」
鋭い声。
全員が振り向く。
「完成度、下がってます。前より明らかに」
希が眉を上げる。
「具体的には?」
ルナは一瞬だけ躊躇った後、
はっきり言った。
「チームとしての基準が、合ってないんです」
その視線が、
べりーに向く。
スタジオの空気が凍る。
「11歳で、この振付は無理があります」
ルナの声は冷静だった。
「基礎が足りないままステージに立つのは、全体のレベルを下げるだけです」
みおが慌てて口を挟む。
「ルナちゃん、言い方……!」
「事実でしょう?」
ルナは引かなかった。
「才能があるのは認めます。歌が上手なのも、顔も。でも、才能だけで、それだけで立てる場所じゃない。」
べりーは、何も言えなかった。
言い返す言葉はあった。
でも、正しさの前では意味を失う。
(……わかってる)
(私が一番、わかってる)
ユナが、低い声で続ける。
「韓国なら、この年齢で
毎日10時間は基礎練習」
責めているわけじゃない。
でも、それが現実だった。
華が、強めに言った。
「才能を潰す言い方はやめて」
ルナが睨み返す。
「潰してません。“現実”を言ってるだけ、」
凛が、ゆっくりと前に出た。
「……両方、正しい」
全員が静まる。
「でも、SWは“完成された人間”だけの場所じゃない」
その視線が、べりーに向く。
「ここは、“未完成を削る場所”」
沈黙。
そして。
べりーが、絞り出すように言った。
「……すみません」
声が、震えている。
「私が、足を引っ張ってます、私が実力無いから…」
その瞬間。
ちぇりーの表情が変わった。
「……違う」
でも、べりーは止まらなかった。
「みんなが正しいんです。私は、まだ“途中”で……」
ちぇりーが一歩前に出る。
「途中でも、立っていい場所だよ」
その優しさが――
べりーを、余計に追い詰めた。
「それは……」
べりーの声が、強くなる。
「お姉ちゃん、だから言えるんでしょ」
スタジオが静まり返る。
「……最初から選ばれて、最初から評価されて…」
「私とは、スタートが違う!」
ちぇりーの目が、鋭くなる。
「……あなたは、何も知らない」
一歩、距離を詰める。
「私が、どれだけ頑張ったか…!」
「“才能ない”って、何百回言われたかっ…!!」
声は低い。けれどたまに裏返ってしまう。
「光って見えるのは、削った後だけなの…!!!!」
べりーの涙が、止まらなくなる。
「……でも、私はまだ削られてない」
「それが……怖いの」
小さく、震える声。
「私、壊れるのが怖い」
その言葉に、
ちぇりーは返せなかった。
ルナが、苛立ちを抑えきれず言った。
「感情論、やめません?」
「私たちは“商品”です。“結果”がすべて」
希が冷たく笑う。
「新人のくせに、随分言うね」
ルナが睨み返す。
「結果出せるから、いい商品になる自信あるので、言えます」
空気が、完全に割れた。
みおが泣きそうな声で言う。
「……みんな怖いんだよ」
「居場所がなくなるのが、」
ユナが、静かに頷く。
「競争だから」
「優しさだけじゃ、残れないんだ」
凛が、はっきり言った。
「今日は、ここまで」
全員が驚く。
「今のまま続けても、壊れるだけ、」
「メンバー不仲説出たら、終わりでしょ?」
「これからもっと売れるんだから。」
凛の目は、冷静だった。
「明日から、個別評価に切り替える」
空気が、さらに張り詰める。
スタジオを出た後。
べりーは、ちぇりーの後ろを歩いていた。
声をかけられない。
やっと、べりーが言う。
「……私、邪魔?」
ちぇりーは、答えなかった。
それが、
一番つらかった。
家に着いても、
二人はほとんど話さなかった。
べりーは、布団の中で泣いた。
(同じ夢なのに、)
(同じ場所なのに、)
(どうして、こんなに遠いの_?)
(やっぱ、お姉ちゃんと私は違うんだよね、)
(アイドルなんて、向いてないのかも。)
(アイドルは、お姉ちゃんのお仕事なんだ。)
(実力無い私には出来ない。)
翌日。
事務所からの通達。
《初ステージ評価:センター候補選抜あり》
全員の顔色が変わる。
ここから先は、
感情ではなく、結果。
そしてメンバーでの、争いだ。
そして、
べりーの“歌”が、
初めて本当の意味で試される。