私勇者!今日は初めて魔物を倒しに行く。
街の門にいる警備隊のおじさん達と挨拶を交わし、街の外に出た。
「街の外ってこんな風になってるんだぁ!」
緑の茂った草原、風は冷たくあまり着込んでいない体に刺さる冷たさだ。
辺りを見渡しても、魔物らしき影は見えなかった、街の門からさほど離れていないせいかもしれない。
装備は昨日壺を割っている時にたまたま手に入った【なべのふた】を装備している。
しばらく、歩いていると草むらから飛び出て来る影があった、スライム? だろうか人型であるそれは、ぷるぷるとしていてドロドロだった。
とりあえず私は、持っていた なべのふた で殴りつけた。
感触的には手応えは一切ない、空を切った様な感覚だった、確実に獲物を捉えたと思ったがそうでは無かったらしい。
殴ったはずのそれも首を傾げている。
様子を伺っているのか、向こうから攻撃してくる素振りは無い、私はチャンスとばかりにもう一回殴りつけた。
結果同じ空を切るだけに終わってしまった。
するとそれが口を開いた。
「貴方、殴る時に腰が入ってないわよ。あとなんでなべぶた?」
それはアドバイスしてきたのだ、びっくりはしなかったが動揺はした。
「お金……無くて、武器買えなくて……」
これまでの経緯を全部説明した。
「なるほどね、貴方が今期の勇者ってわけね」
「はい、そういうことです」
「とりあえず、今日は帰りなさい。それと、王様からお金貰ってきなさい」
「はい……」
倒そうとした魔物から説教食らうとは……
その日は諦め街に帰った。
門の警備隊のおじさん達に挨拶を交わし帰路に着いた。
その後色々な人と会話したが、なべのふた について何か言われることは無かった。
それは多分、勇者だから。
ステータス LV1 name兎雪 凛
HP1200
MP5
所持金 254G