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#ローファンタジー
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24-1◆王の尋問そして託された夢◆
坂元に引きずられ、俺のクラスから連れ去られた三好央馬。
彼がたどり着いたのは、新校舎の屋上だった。
フェンスに囲まれただけの殺風景なコンクリート。
そこは轟木一派だけが使っている彼らの「城」だ。
三好は、そこに無様に投げ出される。
彼の周りを轟木一派の三年生たちが静かに取り囲む。
「剛造。こいつが三好だ」
逃げ場はない。
三好は恐怖に震えながら、顔を上げる。
「な、何ですか?一体!?俺が何か?」
そして彼は見た。
夕日を背に受け、給水タンクの上に、王のように座る男のシルエットを。
轟木剛造。
傍らには腕を組み、仁王立ちする坂元要介。
静寂を破ったのは坂元要介だった。
彼は三好の胸ぐらを掴み、引きずり起こす。
そして轟木剛造の足元へと突き出した。
「とぼけるな三好。昨日の放課後、1年坊の長峯に手を出しただろうが」
轟木剛造は初めて、その重い口を開く。
その声には意外なことに怒りはない。
ただ奥底に静かな炎が、宿っている。
「なあ、三好」
轟木剛造は、ゆっくりと語り始めた。
「俺は、長峯のこと、弟みてえに思ってるんだ。俺が柔道で果たせなかった夢を、長峯はバスケで叶えられるかもしれねえ。俺は、あいつに夢を託してるんだよ」
「だからあいつには、しょうもないことで潰れてほしくねえ。この学校で、奨学金受給者だってことは絶対に言うな!と俺は再三、忠告してたんだ。言ったところで、いいことねえからな」
轟木剛造は、ゆっくりとしゃがみ込む。
そして三好の目をじっと見据えた。
「お前、なんで、それを知ってたんだ?」
「まさか、長峯が自分から言うわけねえからな」
その言葉に、三好の顔が僅かな希望に歪んだ。
彼は、これが尋問であると同時に命乞いのチャンスであると瞬時に理解したのだ。
三好は這いつくばったまま、必死に制服のポケットを探る。
そして震える手で、一枚の小さなメモを取り出した。
「こ、これです!俺がやったんじゃない!」
「こいつが!こいつが俺の机に!」
「だから俺は、ただ事実を!」
三好は無様に、そのメモを轟木剛造剛造の足元へと差し出す。
坂元要介がそれを受け取り、そして轟木剛造へと手渡した。
轟木剛造は、そのメモを受け取る。
そして、そこに書かれた無機質な一文を静かに読み上げた。
「長峯昌吉は奨学金野郎」
轟木剛造の瞳に、明確な怒りの色が宿った。
彼はそのメモをゆっくりと握り潰す。
そして三好へと最後の問いを投げかけた。
「要介。こいつ。誰から聞いたか吐かせるぞ」
「ああ。剛造。やり方は任せろ」
24-2◆尋問と次なる標的◆
「おまえ、誰からこのメモをもらった?」
坂元のその問いが、夕暮れの屋上に響き渡る。
三好は答えられない。
答えるべき事実を、彼が持っていないからだ。
「わからないんです。本当です」
「さっさと誰から聞いたか?言えよ!」
坂元の声が、地響きのように、三好の鼓膜を震わせた。
「本当に知らないんです。メモは机の中に入ってただけなんです」
坂元要介が、隣に立つ部下の一人、高島へと顎をしゃくる。
高島は、静かに頷くと、三好の元へと歩み寄った。
そして無言のまま、その屈強な拳を三好の腹部へとめり込ませた。
「ぐぶっ!」
三好は胃液を吐き出し、床を転がる。
しばらく高島から三好への暴行は続く
「おまえ、本当に知らねえのか?」
坂元の声は、氷のように冷たい。
「お、俺は本当に知らないんです!」
「このメモが机にあの朝、入ってただけなんです!」
三好の悲鳴は本物だった。
坂元は、その表情から三好が、本当に何も知らないことを読み取った。
轟木はつまらなそうに舌打ちをすると、質問を変えた。
「じゃあ聞くが、三好」
「このことをお前以外の誰が知っている?」
その問いに三好は一瞬の躊躇もなく、即答した。
まるで蜘蛛の糸に飛びつくように。
「冨田と田原です!俺のダチの二人だけです!」
自分の仲間を売るのに、彼はコンマ1秒もためらわなかった。
その哀れな姿に、轟木は静かに立ち上がる。
そして一言だけ命じた。
「要介。その二人を今すぐ、ここに連れてこい」
坂元は、高島に目配せする。
「高島。三好に連いていけ。そして一緒にその二人をここに連れてこい」
「はっ」
高島たち、轟木一派の三年生は、三好を引きずりながら屋上を出ていく。
後に残されたのは、轟木と坂元二人だけとなった。
夕日が彼らの長い影を作る。
静寂の中、轟木がぽつりと呟いた。
「要介。もう一つ、気になることがある」
「なんだ?剛造。協力するぜ」
「昨日、三好と揉めていた長峯を偶然、助けてくれた奴がいるな」
坂元が答える。
「ああ。二年の音無 奏とかいう陰キャらしい」
轟木は、夕日に染まる街を見下ろしながら、静かに言った。
「音無奏……か」
「そいつにも、一度会ってみてえな。礼を言いたい」
その問いと二人の短いやり取りが、夕暮れの屋上に重く響き渡った。