テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「今までありがとう」
もしも別れることがあった時、そう言わないでと彼女が言った。
僕はわかったと返事をした。
気になったので理由を聞くと、
「今まで付き合った人たちと別れた時、原因はお前だって散々言われたの。
ありがとうと言われる筋合いはあたしにはない
の。」
そうかとだけ言って話は終えたが、正直過去の男を理由にこんなことを言われたのは心苦しい。
僕は彼女と別れるつもりはないから、別れることに対してのありがとうはいう事はないだろう。
そう思って、ベッドに向かった。
それからもう3年が経った。
3年記念日だったので、いい所のレストランに食事に来ていた。
僕は今日、ここでプロポーズする。
付き合って1年が経った時から、僕たちは同棲をしていた。
彼女からの案だったから、彼女は僕とそうなることを前提としているんだと思った。
今日、ここへ来る前にも彼女から今日話があると、そう言われた。
なんの変哲もない、いつもの彼女がそう言ったから、そういう話を彼女からしてくるのかと思った。
言いたくはないが、彼女は僕よりも男前だから、有り得る話だ。
どこでなにを間違えたのだろう。
僕は彼女に尽くしてきたつもりだったし、嫌だということをしたことは1度もない。
気に食わないようなことをしたこともない。
レストランで僕と彼女が食事をしている最中、話を持っていきやすいように付き合った当初や出会いの話をしていた。
僕から彼女に一目惚れしたこと、甲斐性なしで面白みすらない僕からアピールを頑張ったこと。
なにを話したか覚えていないほどに、緊張と戦っていた。
彼女は僕の話を頷いて聞いてくれていた。
僕が一通り話を終えたあと、彼女は僕にこう言った。
「ごめんね。別れよう。」
「…え?」
「どうして、」
「ごめんね。言えないの。ごめんね。」
彼女は一向に理由を言おうとはしなくて、現金だけを机にぽんと置いて行ってしまった。
僕はもう何も考えられなくて、支払いをしてか
らレストランを出た。
家の前の信号を渡ろうとした時に、スマホが鳴った。
電話ではなく、メールだった。
送り主は彼女だった。
なにを送ってきたのか、別れたい理由を伝えてきてくれたのか。
気になって気になって、すぐにメールを開いた。
メールの内容は別れたい理由ではなかった。
僕は驚くしかなかった。
彼女がそんなことを言ってくるとは思わなかったから。
メールの内容はこうだった。
「今までありがとう」
boyfriend’s perspective end.
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!