テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
🌸第4話 置いてきた笑顔
ひよりが転校したのは、小学四年の終わりだった。
「……転校?」
陽が驚いた顔で聞き返すと、
ひよりは小さくうなずいた。
「うん。お父さんの仕事で……来週には」
「来週!? 急すぎだろ……」
陽は言葉を失った。
ひよりは笑おうとしたけれど、
目の奥は少し揺れていた。
「……はるくん、今までありがとう」
「なんだよそれ。まだ来週まであるし、また遊べるだろ」
「……うん」
ひよりはそう言ったけれど、
その声はどこか寂しそうだった。
🌙転校先でのひより
新しい学校。
知らない教室。
知らない顔。
ひよりは、前の学校と同じように、
お気に入りのワンピースを着ていた。
休み時間、近くにいた男子がひよりを見て言った。
「その服、なんか似合ってないよ」
軽い調子だった。
悪意なんてなかった。
ただ、思ったことをそのまま口にしただけ。
でも、その瞬間――
「だよなー」
「なんか変じゃね?」
「うん、ちょっとダサ……」
周りの男子が、面白がるように笑って加担した。
ひよりは固まった。
(……似合ってないんだ)
(私、変なんだ)
胸の奥がじんわり熱くなって、
でも涙は出なかった。
ただ、
“自分の選ぶものに自信がなくなった”。
服も、髪型も、話し方も、
全部「間違ってるのかもしれない」と思うようになった。
(はるくんは……そんなこと言わなかったのに)
ひよりは、
“昔のひよりちゃん”をそっと胸の奥にしまった。
🌸ひよりの独白
(大学で、はるくんを見つけたとき)
(声をかけようなんて……思えなかった)
(だって、今の私は……あの頃の私じゃないから)
だから、
ひよりは陽に気づかれないように距離を取っていた。
(でも……部室で近くで見たとき)
(あの頃のままの声で、困った顔で……)
(……気づいちゃったんだよ、はるくんだって)
胸が痛くて、
でもどこか懐かしくて。
(気づかれなくてよかった……)
(でも……少しだけ、寂しい)