テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#異世界転生
K-Takasaka
141
K-Takasaka
154
K-Takasaka
65
#タイムループ
刑務所の独房には、メバルの声が響き続けていた。
「セクハラだ〜! セクハラだ、セクハラだ〜!」
K-Tは壁際に固定されている。
両手は背中側で何重にも手錠をかけられ、腕と胴体は固定ベルトで押さえられていた。両足にも頑丈な拘束具が装着され、身動きが取れない。
カキは手錠と足枷をつけられ、独房の隅に座っている。
メバルは丈夫なロープで全身を縛られていた。両腕、胴体、両足を何重にも固定されている。
「セクハラだ〜!」
カキが困ったようにメバルを見る。
「メバルちゃん、もう少し声を抑えたほうがいいんじゃない?」
「セクハラだ〜!」
「聞いてない……」
そのとき、廊下から警備員の足音が近づいてきた。
K-Tは足音の方向へ目を向ける。
「巡回が来る」
「どうするの?」
カキが尋ねる。
K-Tは答えなかった。
警備員が独房の前を通り過ぎようとした瞬間、K-Tが動いた。
両腕を一気に引く。
固定ベルトが金属音を立てて外れた。
続けて、手錠をねじり、両足の拘束具を踏みつける。最後に胴体のベルトを引きちぎった。
すべてが終わるまで、わずか五秒。
K-Tは何事もなかったかのように立ち上がった。
「……え?」
カキが目を丸くする。
メバルも叫ぶのをやめた。
「Kさん、今の何!?」
「五秒だ」
「そういうことじゃなくて! とても厳重な拘束だったよね!?」
K-Tはメバルの前にしゃがみ込んだ。
黒いガラケーを取り出し、アンテナを伸ばす。
「これで切る」
ガラケーの角をロープに当てる。
すっ。
ロープが一瞬で切れた。
「切れ味良すぎない!?」
メバルが驚く。
「特殊素材だ」
K-Tは淡々と答え、メバルを縛っていたロープを次々と切断していく。
最後のロープが切れると、メバルは自由になった。
「助かったよ、Kさん!」
メバルは腕を回し、立ち上がった。
先ほどまで叫び続けていた「セクハラ」という言葉は、もう口にしなかった。
K-Tはカキの前へ移動する。
カキは手錠と足枷を見下ろした。
「俺の拘束具はどうする?」
K-Tはカキの足枷を確認した。
それから、自分の足元へ視線を落とす。
K-Tが履いている靴の靴底には、アオノが組み込んだ特殊素材が使われていた。
K-Tは無言のまま、片足を高く振り上げた。
そして、足を垂直に落とす。
ガキンッ!
かかとが足枷を直撃し、金属製の拘束具が一撃で砕けた。
カキは目を見開いた。
「……え?」
K-Tは何も言わず、もう一度足を振り上げた。
ガキンッ!
今度は手錠が壊れた。
カキは自由になった自分の手と、K-Tの靴を交互に見た。
「Kさんの靴、何でできてるの?」
K-Tは答えなかった。
メバルが壊れた拘束具を拾い上げる。
「かかと落としだけで壊すなんて……」
「特殊素材だよ」
カキが苦笑する。
「アオノが作った装備、全部すごすぎない?」
三人は独房の扉の前に立った。
メバルが扉を見上げる。
「これ、どうやって開ける?」
K-Tがガラケーを構えた。
しかし、メバルが一歩前へ出た。
「私がやる」
メバルは扉から距離を取った。
そして、勢いをつけて突進する。
「それっ!」
ドォンッ!
メバルのタックルが扉に直撃した。
扉が大きくへこむ。
「もう一回!」
メバルは再び突進した。
ドゴンッ!
蝶番が外れ、鉄格子の扉が通路へ倒れた。
「開いた!」
カキが驚いて扉を見る。
「メバルちゃん、牢屋をタックルで壊したよ……」
「細かいことは気にしないの!」
三人が通路へ出ると、隣の牢屋から声が聞こえた。
「おい、そこの男!」
K-Tが振り返る。
隣の牢屋の囚人が、鉄格子の隙間から二つのメリケンサックを差し出していた。
「これを使ってくれ!」
メバルが受け取る。
「どうして?」
囚人はK-Tを見つめていた。
K-Tがわずか五秒で拘束を解き、仲間を助け、牢屋まで突破した。その姿から、囚人はただならぬ気配を感じ取っていた。
「その男なら、ここから出してくれる。これを使ってくれ!」
K-Tはメリケンサックを一つ受け取った。
もう一つをメバルが装着する。
「分かった。Kさんと一緒に行くよ」
K-Tは短くうなずいた。
カキが通路の先を確認する。
「警備室は右。階段はその奥。出口は一階だよ」
「カキちゃん、道が分かるの?」
「入る前に案内板を見た」
「よく覚えてたね……」
そのとき、警報が鳴り始めた。
赤いランプが点滅し、通路の奥から警備員たちが走ってくる。
「止まれ!」
K-Tとメバルが前へ出た。
警備員が警棒を振り上げる。
K-Tは攻撃を受け止め、相手の腕をひねって壁際へ押し込んだ。
別の警備員がメバルへ向かってくる。
メバルは拳を構え、メリケンサックを警備員の顔の手前で止めた。
「そこから動かないで!」
警備員がひるんだ隙に、メバルは相手の腕を取り、床へ押さえつける。
K-Tも警備員を次々と押し退けていく。
「カキ、案内しろ」
「分かった、Kさん!」
カキが先頭に立つ。
「右! 次は左! 階段はこの先!」
カキは足枷を引きずりながら、懸命に走った。
階段の上からも警備員が現れる。
K-Tが階段の前に立ち、全員を食い止めた。
警備員が何人も押し寄せるが、K-Tは一歩も引かない。
警棒を受けても、肩を押されても、表情を変えずに相手を押し戻していく。
「Kさん、早く!」
メバルが階段の下から叫ぶ。
K-Tは最後の警備員を壁際へ押しやり、メバルとカキの後を追った。
三人は出口へたどり着いた。
しかし、防火扉には鍵がかかっている。
カキが案内板を確認する。
「ここが外への出口。でも、開かない!」
メバルがドアノブを回す。
「Kさん、どうする?」
K-Tが一歩前へ出る。
だが、メバルが再び距離を取った。
「今度も私がやる!」
メバルは勢いよく防火扉へ突進する。
ドォンッ!
扉がへこむ。
「もう一回!」
ドゴンッ!
ロックが外れ、防火扉が開いた。
冷たい夜風が刑務所内へ流れ込む。
三人は外へ飛び出した。
「脱獄成功!」
メバルが叫ぶ。
カキは足枷を引きずりながら、森林の方向を指差した。
「この先に森がある! そこへ行けば追跡を振り切れる!」
「走るぞ」
K-Tが言った。
三人は刑務所の敷地を抜け、暗い森の中へ駆け込んだ。
背後では、警報音と警備員たちの声が響き続けている。
こうして、K-T、メバル、カキは、警察が管理する刑務所から脱獄することに成功した。
一方、逃げ切ったアオノ、マサカゲ、ミステーは、山の中で三人の到着を待っていた。
六人が再び合流できるかどうかは、まだ分からない。
さらに、狐のお面のグループも、三人の脱獄をすでに知っていた。
コメント
1件
うわぁ…第9話、めっちゃ熱かったです🔥 K-Tさんのあの五秒で拘束を全部外すシーン、鳥肌立ちました。特殊素材のガラケーとか靴、アオノさんが仕込んでくれたんだなって思うと、仲間っていいなってじーんとします。メバルさんのタックルで扉ぶっ壊すのも、迫力ありました💥 カキちゃんが案内板覚えてたのも賢くて頼りになるし、三人の連携がどんどん固まってて、このチーム本当に好きです。 そっか、あと一人捕まってる子がいるんだ……みんなが合流できるかドキドキしながら次を待ちます!