テラーノベル
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転移ゲートを抜け、遺失物センターへ戻った後も。
すちはどこか様子がおかしかった。
🦈「すちー」
🍵「うん?」
🦈「聞いてる?」
🍵「聞いてるよ」
🦈「今聞いてなかったでしょ」
🍵「少しだけ」
🦈「聞いてないじゃん!」
こさめがむくれる。
すちは困ったように笑った。
こんなやり取りをしていれば自然と空気が和む。
でも今日は違った。
病院でこさめが見た記憶。
『やっと会えたね』
あの言葉が、ずっと頭から離れない。
そして何より――
すちはその言葉に心当たりがあった。
だからこそ黙っていた。
🦈「すち」
🍵「ん?」
🦈「何か隠してる?」
ぴたり、とすちの足が止まる。
こさめはじっと見上げた。
こさめはふわふわしていて、あまり深く考えていないように見える。
でも時々、妙に勘が鋭い。
🍵「どうしてそう思うの?」
🦈「なんとなく」
こさめは首を傾げる。
🦈「すち、優しい顔してる時と、考えごとしてる時で少し違うもん」
すちは一瞬だけ目を丸くした。
それから小さく笑う。
🍵「観察されてるなあ」
🦈「してる」
🍵「そっか」
でも。
それ以上は言わなかった。
言えなかった。
まだ。
その時。
管理課の扉が勢いよく開いた。
バンッ!!
📢「おい!!」
いるまだった。
なつも後ろからついてきている。
7,359
28
📢「大変だぞ」
🍵「何が?」
すちが聞く。
いるまは書類を机に叩きつけた。
📢「また落ちた」
🍵「……何が?」
いるまが言う。
📢「未来だ」
空気が変わる。
こさめも顔を上げた。
🦈「未来?」
なつがため息をつく。
🍍「正確には未来に関連するもの」
書類をめくる。
そこには新しい遺失物情報が表示されていた。
遺失物名
【明日への期待】
所有者数
推定四千三百万人
🦈「え」
こさめが固まる。
🦈「四千三百万人?」
📢「昨日から急に増えてる」
なつも真面目な顔になる。
🍍「未来が落ちてる影響だろうな」
人は未来があるから期待する。
旅行の予定。
会いたい人。
叶えたい夢。
来週のライブ。
来年の進学。
それらを支える「明日への期待」。
それが大量に失われ始めていた。
🍵「世界安定指数は?」
すちが聞く。
📢「九十七・一%」
いるまが答える。
📢「下がる速度が上がってる」
誰も笑わなかった。
たった数%。
でもこの数%が危険なのだ。
世界というものは、思ったより脆い。
希望や願いで辛うじて形を保っている。
それが崩れ始めている。
🍵「現場は?」
📢「第三保管区」
🍵「行こうか」
すちが立ち上がる。
すると。
🦈「行く!」
こさめも元気よく立った。
🍵「だめ」
即答だった。
🦈「なんで!?」
🍵「危ないから」
🦈「またそれ!」
🍵「またそれ」
🦈「こさめも職員だもん!」
🍵「保護対象でもあるよ」
🦈「むー!」
ほっぺを膨らませる。
なつが吹き出した。
🍍「膨れてる」
📢「ハムスターみたいだな」
いるままで笑っている。
🦈「笑わないでよ!」
こさめが抗議した瞬間。
ピコン。
すちの端末が鳴った。
新しい通知。
何気なく画面を見たすちの表情が変わる。
優しい笑顔が消える。
🍵「……」
🦈「すち?」
こさめが首を傾げる。
すちは数秒黙ったあと、端末を閉じた。
🦈「どうしたの?」
🍵「なんでもないよ」
嘘だった。
明らかな嘘だった。
なぜなら。
今届いた通知には、こう書かれていたから。
-–
極秘指定
封印資料閲覧許可
対象:人類の未来 管理者候補 第零号
照合結果:一致率99.98%
対象者名
【こさめ】
-–
そして、その下にはさらに続きがあった。
警告
対象者に記憶が戻った場合、
世界構造に重大な影響が発生する可能性があります。
すちは静かに画面を消した。
そして誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
🍵「……まだ思い出さないで」
その願いが届くように。
けれど同じ頃。
遺失物センターのどこかで。
あの闇の声が、少しだけ笑っていた。
『もうすぐ』
『もうすぐきっと全部、思い出す』。
『早く思い出して。お願い。早く‥』
『俺を早く思い出して。こさめ』
コメント
1件
うわっ……第7話、めっちゃ重くて切なくて鳥肌立ったよ…!😭💦 すちが「なんでもないよ」って笑ったとこ、絶対ウソだし。それなのにこさめにまだ言えない感じがもう苦しくて…。 しかも「対象者名 こさめ」「一致率99.98%」って…!! しかも世界の未来の鍵がこさめで、記憶戻ったら世界に影響とかもうヤバすぎるでしょ…! 「まだ思い出さないで」ってすちの願い、切なすぎて胸がギュッてなった🥺 闇の声も「早く思い出して…こさめ」って…どっちの思いが正しいのかも分かんなくて、続きが気になりすぎる…!! 藍翠さん、今回も最高にエモくてゾクゾクしました…✨ 続き待ってます!!