テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
7,359
28
結局。
🦈「行く」
🍵「だめ」
🦈「行く」
🍵「だめ」
🦈「行ーーくーー」
🍵「だめだよ」
という十数分に及ぶ攻防の末。
こさめは第三保管区へ行くことになった。
📢「なんで!?」
いるまが叫ぶ。
🍵「押し切られた‥」
なつが呆れた顔をする。
🍍「すち、お前監視役向いてない」
🍵「保護役だから」
🍍「そこじゃねえ」
こさめは勝ち誇った顔だった。
🦈「ふふん」
🍍「絶対反省してないな」
🦈「してない」
📢「堂々と言うな」
そんなやり取りをしながら、四人は第三保管区へ向かう。
しかし近づくにつれて、空気が変わった。
重い。
息苦しい。
まるで曇り空が心の中まで入り込んできたみたいだった。
🦈「これ……」
こさめが小さく呟く。
第三保管区の扉が開く。
中には無数の光が漂っていた。
けれど昨日見た「夢」とは違う。
色が薄い。
弱々しい。
今にも消えてしまいそうだった。
🍍「これが『明日への期待』」
なつが説明する。
🍍「明日友達と遊ぶ約束とか」
🍍「来月の旅行とか」
🍍「楽しみにしてること全部だ」
こさめは近くの光に手を伸ばした。
ふわり。
淡い黄色の光が揺れる。
すると。
また映像が流れ込んできた。
―――
高校生くらいの女の子。
机に向かって勉強している。
机の端には写真が飾られていた。
離れて暮らす祖母との写真。
『受かったら会いに行くんだ』
そう笑う声。
未来への期待。
その光が少しずつ崩れていく。
―――
映像が消えた。
🦈「……」
こさめは黙り込む。
胸が苦しかった。
こんなにもたくさんの人が。
少しずつ未来を失っている。
🦈「返せないの?」
ぽつりと聞く。
いるまが首を振った。
📢「落とし主が多すぎる」
🍍「しかも根本原因が解決してない」
なつが続ける。
🍍「人類の未来が戻らない限り増え続ける」
こさめは光を見つめた。
どうしてだろう。
他人のものなのに。
全部守りたくなる。
その時。
一つの光が急に崩れ始めた。
「まずい!」
職員が叫ぶ。
消失寸前。
あと数秒で完全に消える。
職員たちが駆け寄る。
しかし間に合わない。
誰もがそう思った。
次の瞬間。
こさめが飛び出していた。
🍵「こさめちゃん!?」
すちが驚く。
こさめは消えかけた光を両手で包み込んだ。
🦈「消えちゃだめ」
ただそれだけ。
本当にただそう言っただけだった。
なのに。
眩しい青い光が溢れた。
第三保管区全体が青く染まる。
消えかけていた光が止まる。
一つ。
また一つ。
また一つ。
崩壊していた期待たちが元の姿へ戻り始めた。
📢「な……」
いるまが言葉を失う。
なつも目を見開く。
職員たちが騒ぎ出す。
「修復されてる!?」
「手を加えてないぞ!」
「あり得ない!」
すちだけが黙っていた。
まるで予想していたかのように。
青い光の中心で。
こさめはきょとんとしている。
🦈「え?」
本人が一番分かっていない。
🦈「なんか光った」
📢「なんかじゃない」
いるまが即座に突っ込む。
📢「めちゃくちゃ光った」
🦈「そうなの?」
🍵「そうだよ」
すると。
パリン。
どこかで音がした。
全員が振り返る。
第三保管区の奥。
空間に小さな亀裂が走っていた。
昨日のものよりずっと小さい。
けれど。
その向こうから誰かがこちらを見ていた。
?『やっぱり!』
ぞわりと寒気が走る。
?『君だったんだね』
こさめの心臓が大きく脈打つ。
知らない。
見たこともない。
それなのに。
なぜか怖くなかった。
むしろ――
懐かしい。
そんな感覚がした。
?『早く思い出して』
影が微笑む。
?『君が誰だったのか』
その瞬間。
こさめの頭に激痛が走った。
🦈「っ……!」
膝が崩れる。
すちがすぐ支えた。
🍵「こさめちゃん!」
視界が揺れる。
また記憶。
青空。
そして今度は。
誰かの背中だけではなかった。
白い服を着た少年。
自分と同じくらいの年齢。
振り返る寸前。
その少年が笑う。
『約束だよ』
そこで映像は途切れた。
🦈「はぁ……っ」
呼吸が荒くなる。
すちの手が背中を支える。
🍵「大丈夫?」
穏やかな声。
優しい声。
なのに。
こさめはふと思った。
すちは知っている。
何かを。
自分のことを。
ずっと前から。
🦈「……すち」
🍵「ん?」
🦈「こさめのこと、知ってる?」
すちの瞳がわずかに揺れた。
ほんの一瞬だけ。
それをこさめは見逃さなかった。
そしてその夜。
監査局最深部。
誰も入れない封印資料庫で。
すちは一枚の古い写真を見つめていた。
そこには二人の少年が写っている。
一人は、こさめ。
そしてもう一人は――
若い頃の、すちだった。
写真の裏には短い文字が残されている。
**『未来管理計画 第零号と第一号』**
**『親友記録』**。
コメント
1件
うわあ、第8話、めちゃくちゃ良かったです……! まず「明日への期待」が光として可視化されている世界観、本当に素敵で、でもそれが弱々しく消えそうになっている描写に胸が締め付けられました。こさめが無意識にあの光を修復したシーン、すごく美しくて神秘的で、でも本人が一番驚いてるのがまた可愛い(笑)。そして最後のすちの写真——「未来管理計画 第零号と第一号」「親友記録」……もうその一文だけで過去に何があったのか想像が止まらなくなります。こさめとすちの関係性にこんな背景があったなんて。続きが気になって仕方ないです! 丁寧な伏線の貼り方、本当に引き込まれました。