入院してから三週間が経った。ユウはまだ、痛みと戦っていた。
体は細く、ベッドの上で動くこともままならない日々。
病室の窓際には、ひと鉢のポトスが置かれている。
誰が置いたのか知らないが、鮮やかな緑が白い空間の中でひときわ目立っていた。
「ねえ、ポトス。明日も痛みが少なくなったらいいな」
声に出して話すのは、最初は恥ずかしかった。
でも、誰もいないこの場所で、誰に話せばいいかわからない自分にとって、
この植物だけが唯一の「会話相手」だった。
ある晩、強い痛みで眠れなかった夜、ユウは窓辺に寄りかかってつぶやいた。
「もう、どうしてこんなに辛いのかな……」
すると不思議なことに、ポトスの葉がわずかに揺れた気がした。
もちろん、部屋には空調の音しかない。
けれど、その瞬間だけ、ユウの心は少しだけ軽くなった。
数日後、夢を見た。
夢の中でポトスは巨大な樹のようになり、葉から光を放っていた。
その光はユウの身体を包み込み、
「痛みも恐怖も、いつかは根から流れていくものよ」と静かに告げた。
目覚めた朝、痛みは依然としてあったが、ユウの心は何かを掴んだように落ち着いていた。
痛みだけが人生ではない。苦しみの先に、必ず光がある。
入院生活はまだ続く。
でもユウは、ポトスに話しかけながら、少しずつその「光」を信じてみようと思った。
窓の外では、季節がゆっくりと移り変わっていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!