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《あとがき》
この物語は、 五人分の「終わり」を描いたわけではありません。
描いていたのは、
【五通りの関わり方の答え】
でした。
塩﨑太智は、 誰よりも場の空気を感じ取り、 誰よりも先に「自分が引くべき場所」を見つける人でした。
彼の花であったヒガンバナは、覚悟でもあり、再会の花でもあります。
離れることは、関係を終わらせるためではなく、また会える余白を残すため。
自分が自分以外を背負うという覚悟は何よりも重い枷となるものです。
それでも彼は一番初めに覚悟を決めていました。
この覚悟は最初の別れであり、 同時に五人を結ぶ最初の約束でもありました。
山中柔太朗は、軽やかに見えて、実は一番多く抱え込む人でした。
冗談を言いながら、本音を奥にしまい込む。
彼の花が示していたのは、祝福や幸せを祈ること。
彼は場を和らげることで誰かが壊れないようにしていました。
そして、自然と誰かが安心して揺れられる場所を作っていたのだと思います。
しかし誰かの幸せを願うというのは、時に自分を殺さなくてはなりません。
メンバーが好きだからこそ、自分を後回しにしてしまう。
幸せを願うことは、同時に自分の枷にもなるものです。
吉田仁人は、言葉を持つ人でした。
考え、迷い、それでもみんなのために言葉にしようとする人。
みんなのために言葉を使う人
だからこそ、彼の沈黙は重く、彼の決断は静かな痛みを伴っていました。
彼の花言葉が語っていたのは、自分の言葉を信じるということ。
本心でなくても、彼が発する言葉の裏には、いつも愛情があったのだと思います。
それはとても強い信頼でもあり、優しい枷でもありました。
佐野勇斗は誰よりも仲間を思って、希望を持ち続ける人でした。
それとともに、一番迷い、一番最後まで悩み続けた人でもあります。
次々と仲間が決断していく中で、残った最年長と最年少。
きっとたくさん悩んだと思います。
彼は見送り、受け止め、それぞれ三人の選択を 胸の中で抱え続けました。
誰よりも仲間思いな彼の優しさと希望を持ち続けるプライドは、時に決断の枷にもなります。
彼は生きた感情をそのまま残し、再会できることを確信して目を閉じました。
そして最後まで残った曽野舜太は、全体を見る人でした。
それぞれメンバーを見届けるなかで、ずっと葛藤していたと思います。
彼の花であるライラックは、思い出と友情の花です。
最年少だからこそ、思うことはある。
知識豊富だからこそ、悩みすぎてしまう。
それでもこの選択は、彼にとって消えることではなく、残り続けるための形だったのだと思います。
彼には枷がありませんでした。
兄たちを見て育ってきた彼は、強い友情を持ち、その強い友情を代償として、再会を求めたのだと思います。
四人は自分の枷を受け入れて、一人は大切だったものを代償にして、それぞれ新しい自分として再会できるように
作中で描かれた「標本になる」という選択、言葉は、 衝撃的に見えたかもしれません。
しかしこれは、誰かが壊れていく物語ではありません。
むしろその逆で、壊れないために、どう距離を取るかを考え続けた人たちの話です。
一緒にいることが正解とは限らない。
離れないことが、必ずしも優しさではない。
登場人物たちは、誰一人として「正しい選択」をしたとは言いません。
同時に、誰一人として「間違っていた」とも断じられません。
それぞれが自分の性格を知り、自分の立ち位置を理解し、自分なりの答えを引き受けただけです。
その姿が、どこか不器用で、どこかやさしくて、読者様自身と重なればいいなと思います。
今回、『人間標本』の醍醐味である蝶ではなく、花、そして花言葉を物語の軸に据えたのは、人は本当に大切なことほど、直接言葉にできないからです。
「また会いたい」
「忘れないでほしい」
「今は離れるけど、気持ちはここにある」
そういった想いは、声に出す前に壊れてしまうことがある。
だから彼らは、花にそれぞれ枷となっていた感情を預けました。
枯れても、季節が巡ればまた咲くものに。
彼らは完全にいなくなるわけではありません。
「思い出される場所」に残ります。
それは、人が誰かを大切に思った証が、簡単には消えないということを信じたかったからです。
最後に。
離れることは、弱さではありません。
沈黙も、逃げではありません。
本気で誰かを思ったからこそ、その場を去る人もいる。
この物語は、そんな選択を静かに肯定するために書きました。
私にも枷があります。
それは感情によってブレてしまうこと。
でもそれは、時に味になるものだと思っています。
その人の感情はその人しか持っていませんから。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、またどこかで
再会できますように。
私は【感情】を置いていった。
コメント
1件
もう素敵すぎる物語でした😭