テラーノベル
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閲覧ありがとうございます。
こちらは会社員💛と天使🩷の🩷💛設定で作成しております。
他のメンバーも後々出現予定、他Gのメンバーもほんの少し出現、直接的な絡みはありませんがモブもいます。
CP・捏造世界線・他メンの交わりが苦手な方は記憶を削除の上、ブラウザバックをお願いいたします。
シリーズものにする予定ですがおそらく途中で飽きると思います…。
大丈夫な方だけお進みください。
7日経っても脳裏から離れない。そして、周りも何より離してくれなかった。
お前のせいだ。
幾度となくこの間に向けられてきたこの言葉は、やがて自分の中にも繰り返されていた。
洗面所の鏡に、忌まわしい顔が写ってる。
頭から水の入ったバケツを被ったように惨めな姿。
あの時もきっと、そうだったんだろう。
それと目があった瞬間、とある結論に至った。
この街を出て行こう、と。
全部、自分の想いに蓋をして。
帰宅ラッシュに揉まれる人々を背に、ホームでぼんやりと突っ立っていた。
…疲れた。
それだけが頭に浮かんでくる。
朝の通勤ラッシュも、上司の頭に響く怒鳴り声も、終わらない業務も。
自分のやりたいことは、生きている意味は。
考えのまとまらない頭で、常に微睡んでいるような感覚でもう1ヶ月も過ぎた。
聞き慣れたチャイムが、水越しに聞くように鼓膜に響く。
ああ、やっと帰れる。
これで1日耐え切ることができた。
2回目のチャイムの少し後、瞬いフラッシュが視界に入って右を見た。
少しずつ大きくなっていくその光が、今の自分には神の後光のように思えた。
いや、本当にそうなのかもしれない。
恍惚とした気持ちで、身体が吸い込まれていく感覚に襲われる。
今日は終わった。
でも明日は?
転職しても、そのあとは?
意外とこれって、いけるんじゃないか?
古い映画のワンシーンみたいに4隅が暗い視界で、フラッシュが眩く視界を照らした。
夢から覚めたのは、その直後だった。
ハッとした時には、すでに駅のホームで尻餅をついていた。
電車が大きな音を立てて乱暴に過ぎ去っていく。
やたらと心臓がバクバクしていた。
謎の息切れがある。
「…い、おい!!」
後ろから突如肩を捉えらた。
声が降ってきた方を見ると、驚いた顔の同期が話しかけてきた。
山中だった。
見た事ないぐらいおっかない面構えだ。
我に帰って周りを見ると、ザワザワと野次馬たちが遠巻きにこちらを見ている。
いや、そんなことより…。
「…今、俺何してた??」
思わず問いかけると、山中は「いやいや」と指を差して言った。
「よっしー線路に飛び込もうとしてたよ、今」
ここで全てを理解した。
「…えぇ!?!?」
また一際大きな声が出てしまった。
家に帰るまでの間、気が気でなかった。
最寄りから家路に着くまで、悶々と考えを巡らせていた。
電車に飛び込もうとしたであろう瞬間、100年の眠気が覚めたような気になった。
しかも、誰かに腕を引かれた感覚。
山中も「俺じゃないよ?」って言ってたし。
と言うか…。
ここまで考えてサッと血の気が引いた。
… これ、かなりやばくね?
忙殺されていたので忘れていたが、メンタルヘルスの心得はある故、この危なさには余計に冷や汗をかかせられる。
もし、あのまま当たってたら…。
ゾッとする考えを振り払うように頭を振ると、自宅の部屋へとトボトボと歩を進める。
カードを取り出して錠の落ちる音を立てた後、いつものように玄関の扉を開ける。
…どうやら、電気を消し忘れたらしい。
煌々と光がともっている。
昨日も何にもできないまま寝落ちしてそのまま家出たから。多分そう。
5歩ぐらいの廊下を歩き扉を開けたところで……立ち止まった。
みんなも想像してみてほしい。
ちょうど、ワンルームの広い空間の中で、見たことのない男がこちらを振り向いた体制で見ている時の俺の気持ちを。
綺麗に二重を描き、犬のようないたいけさも残るややはっきりと鋭い目、首の上を描くスタイリッシュな輪郭、薄い唇。
眩いくらいに白い金縁のボタンのない、学ランのようなデザインに、その背中にはどんな鶴より勝る大きな翼。
来たるシーズンになると下駄箱のなかパンパンになることが安易に予測できる完璧な顔つきの爆イケ男。
そんなビジュを持っている男がやたらと間抜けな表情で、明らかに自分の家のものとわかるピンチハンガーと黒の薄い小さな布を手にして突っ立っていた時の俺の気持ちを。
そして、導き出した答えを。
辿り着いた結論は、一つである。
「ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!」
「アァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!」
久しぶりに腹から声が出た。
これはまごうことなき変態だ。
本物と出会うと、逃げるどころか足腰から力が抜けてしまうものなのか。
声にならない叫び声に呼吸をかき乱されながら思わずドアにずるずると座り込んでしまった。
警察?大家さん?警察?大家さん!?
つかなんでお前も驚いてんだよ!!!
ワタワタとピンチハンガーとその黒い下着を振り回すな!!!
突進してくるな!!!
「なになになにィ!!!??びっくりした!!!!!びっくりした!!!!!」
「おま、お前くまだらけじゃねえか!!!!!!!!!!おいちゃん!!!!!」
壁際で身を縮こませて焦るこっちなどお構いなしにそいつはしゃがみ込んで人の顔を指さした。
「おいちゃん!!!!??!?!!!?俺のこと言ってんの!?!!!?」
「お前しかいねえだろ!!!!!」
「触んなよ!!肩掴むな!!!怖い!!!!!!!!!!!」
ぎゃあぎゃあと会話の成立しないやり取りは、隣からの壁打ち…おそらく拳で殴りつけたような鈍い音によって止まった。
…そして互いに黙りこくった途端。
「「あ」」
2人が反応したのは、こちらから鳴らされる生者の唸り。
「…とりあえずさ」
天使が恐る恐ると切り出した。
「…味噌汁、作ったんだけど…どう?」
十数分後。
テーブルの上に置かれた味噌汁と箸を挟んで向かい合っていた。
久方ぶりの白く暖かい湯気と共に味噌と出汁の香りが鼻の奥を刺激する。
神妙な面持ちで向かい合う2人の間には異様な空気が漂う。
「…つまり、ハヤト?は天使ってこと?」
「うん、まあ、そうなるのかな…」
「もうそこから意味わからないんだけど」
天使がそもそも現存するなんて思いもしなかった。
「そもそも天使ってもっとエグい形してんじゃないの?宗派違くない?」
「それは、知らんけど…俺もうよくわかんなくなってきた…」
「出たよ会議終盤でたまに出るやつ、いい加減にしろお前」
呆れ顔ですんなり出てきたセリフ。
「てか腹減ってんじゃないの?早く食いなよ」
「食べるよ。食べますよ。もう俺腹減りすぎて背中と腹の境界線無くしてんだから」
天使に急かされて長らく出していなかったお椀に手を伸ばす。
そもそもこんなお椀があったことさえ知らなかった。
いや、正確には忘れていた…のほうが正しいだろうか。
「じゃあ、いただきます」
「どーぞ」
便宜上呟いといてお椀に口をつけて。
「…うまっ!」
思わず口に手を添えて天使の方を見た。
天使の方はというと頬杖をついて何故かニヤニヤしている。
いや今はそんなことどうでもいい。
味噌は普通の合わせ味噌、出汁なんかとってすらいない。
一般家庭の何の変哲もない豆腐とわかめの味噌汁。
だが、コンビニの即席味噌汁よりも温かく、心身に染み渡る感覚がある。
思わず、感嘆の息を漏らしてしまうほどに。
目頭が熱くなる感覚に鼻の頭を押さえた。
「あーーーー効く…泣きそう…」
「サウナにでも入ってんのお前…」
苦笑しながら突っ込んだ天使の「でさ」と言う声に顔を挙げた。
「俺、一応一通りの家事はできる天使なの。ここに置いてくれない?何でもするから」
茶目っ気の含まれた控えめな笑顔でそんなことを言う。
…何でも?言ったなお前。
「本当に?言ったね?何でもしてくれるね?」
指をさして少し揺さぶってみたが当の本人はいたって態度を崩す様子もない。
「まじ何でもする。何でも買ってあげるよ」
「無収入だろお前。意味違うし」
何故だか顔が痛い。
ほぼ作り笑いなんかしてないのに。
こいつがいると調子が狂ってくる。
「ね、お願い」
「うん…まあまあまあ…いいよ、勝手にして」
「よっしゃ」
ガッツポーズして見せた天使は、聞いてもないのに名乗り始めた。
「これからよろしく、おいちゃん」
勇斗、と名乗った天使は手を差し出した。
妙なあだ名に少々何とも言えない顔をしつつその手を取る。
「仁人な???こちらこそ…うわすご、実体あるんだ天使って…」
「血通ってないから冷たいっしょ」
「…あー、そうだね。冷たいわ」
…こんなに馴れ馴れしいのになぜ不快感がないのか。
と言うか、なぜこいつの会話のテンポが心地よく感じてしまうのか。
この時の自分は知る由もなかった。
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