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らーゆさん
265
莉太@一時活動休止
2,505
寝室。
らっだぁはもう眠っている。
でも、ぐちつぼだけ眠れない。
暗闇の中で天井を見つめた。
隣から聞こえる寝息。それを聞きながら、
「……寝ちゃったんだ」
と小さく呟く。
さっきまで話しかけようとしていたのに、結局何も言えなかった。
そして、そっとベッドを抜け出す。
ぱっとクローゼットを開いて目に入った服を適当に組み合わせる。スマホと財布を掴んで家を出た。
目的地なんてない。
ただ家にいるのが嫌だった。
コンビニに入って、何も買わずに出る。
街灯の下を歩く。スマホを見る。
らっだぁとのトーク画面。
最後のメッセージを開いては閉じる。
「……俺、何やってんだろ」
はぁ、と小さくため息をついた。
ふと、路地を抜けた先に「花宮」という暖簾がかかった、こじんまりした店を見つけた。
深夜なのに明かりがついている。
少し迷ってから思い切って暖簾をくぐった。
「……いらっしゃい」
カウンターの奥にいた店員の女性が顔を上げる。ぐちつぼを見て、一瞬だけ眉を寄せる。彼女の胸元には「花宮すみれ」と書かれたネームプレートがついている。
「お一人ですか?」
「……はい」
「どうぞ。空いてるところ座ってください」
カウンターの席、ゆっくりと腰を下ろした。店内はガラリとしているが、意外と綺麗だった。メニューを手に取り、ぱっと目についた酒を頼んだ。
頼んだ酒はすぐ出てきた。ジョッキを手に取って、一口飲んだ。冷えた酒は、想像よりも美味しかった。
「……おいしい」
思わずぽつりと呟く。
「よかったです」
それだけ。会話を交わし店内はまた静かになった。しかし、酒が入ってくると徐々に口数が増えてくる。
「……俺さぁ」
「はい」
「最近、恋人と……うまくいってなくて」
すみれは急かさない。
「……そうなんですね」
「なんか、俺ばっかり好きみたいで」
「……」
「一緒にいても、俺のこと見てくれないし」
目頭が熱くなる。
「……聞いてよ。」
「はい。聞きますよ」
この一言で、ぐちつぼは溜まっていた心のわだかまりをすべて吐き出した。
「最近全然構ってくれない」
「話しかけても疲れてるって言われる」
「俺が邪魔なのかなって思う」
「嫌われたのかな」
「でもそんなこと聞けない」
「だって……面倒くさいって思われたくないから」
「……俺、どうしたらいいのかな」
すみれは答えを急がない。ただ、
「……寂しかったんですね。」
その言葉に視界がぼやけて、乾いたぐちつぼの頬を静かに濡らした。
帰る頃に連絡先を書いた名刺を渡された。
「また何かあったら、ここに来てくださいね」
ぐちつぼは、赤く腫れた目を擦りながら会計を済ませ、店を出た。
その後ろ姿をすみれは目で追った。ため息をついて、
「……よっぽど好きなんだなぁ」
と小さく笑った。
店を出たぐちつぼは夜道を歩く。
酔いのせいか、足元がおぼつかない。
「……らっだぁ、寝てるかなぁ」
ぼんやりと呟いて、ポケットに手を突っ込む。指先に、さっき貰った名刺が触れた。
「……また、来ていいって言ってたなぁ」
ふっと笑う。
―――その頃。
らっだぁは、悪夢を見ていた。
コメント
3件
「聞いてよ。」ってタイトルがもう切ない…。すみれさんの「寂しかったんですね」であふれた涙、もらい泣きしそうになった。ぐちつぼの「面倒くさいって思われたくない」って気持ち、痛いほどわかるよ。ただ話を聞いてくれる人がいるだけで、こんなに救われるんだなって思った。最後のらっだぁの悪夢、何だこれ…続きが気になりすぎる🔥