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悪役令嬢は良い人でした

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悪役令嬢は良い人でした

80 - 番外編 祝賀晩餐会の休憩タイム ミシェル視点

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2025年07月31日

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【※第二章エピローグの、その後のお話です】


気持ちのいいヒヤリとした空気が頬を撫で、火照った顔を落ち着かせる。

ミシェルは、先客を見つけると声をかけた。


「父上、こんな所で何をされているのですか?」


ガブリエルはグラスを片手に、一人静かなバルコニーに佇んでいた。

ミシェルに気づくと、フッと笑う。


「少し、休憩をしていた」


要人への挨拶まわりもひと段落し、束の間の休息なのだろう。ミシェル自身も、そのつもりでやって来ていた。


王太子ステファンと、王太子妃になったカリーヌの婚礼式典後のパーティーなのだから、身内としては息つく暇もなかったのだ。


昼間から行われている、国をあげてのお祭りは数日に渡る。

そして、今は貴族に向けた国王主催のパーティー中だ。


――沙織の横にはシュヴァリエが居た。


シュヴァリエは優秀な魔導師として、帝国へ籍を変えた事になっている。そう、友好の証として。

これは、互いの国の混乱を避ける為。ガブリエルとシュヴァリエが決めたことだ。

当然、国王や皇帝は受け入れた。


今回、帝国の代表として招待された、王子サミュエルと、王女イザベラの案内役として、一緒にやって来たのだ。

皇太子としては、シュヴァリエはまだ顔出ししていないので、誰も疑問に思わないだろう。


「それにしても、彼はやってくれましたね」と、ミシェルは少し棘のある言い方をする。


「まったくだ。あの姿で、学園に現れてくれるとはな」


ガブリエルは苦笑した。

卒業式のダンスパーティーに現れたシュヴァリエは、なんと青龍の姿だったのだ。

ミシェルは、チラリとホールの中に目をやった。


「まあ、アレクサンドル殿下の――卒業生からの記念品として、丸く収まりましたけど……」


「そうだな。ステファン殿下が陛下用に作った投影魔道具のお陰だ」


青龍の姿を残せれば……と国王陛下の一言で、実現した魔道具だった。結局、国王よりも先に学園へ贈られることになったのだが。

魔道具での映像――これで、あの青龍が実際にいたとは思うまい。


「サオリ姉様の案ですよね? プロジェクションなんとか……」


「次から次へと、面白い」と、ガブリエルは穏やかな表情を見せる。


「さて、私はもう行こう」

「では、僕も」

「いや……、ミシェルは彼女の相手をしていてくれ。大事なサオリの友人だ」

「もとより、そのつもりです」


とはいえ、そろそろお開きになる時間だ。また明日も続くのだから。

ガブリエルが、ホールへ戻って行くのを見送ると、入れ違いにやってきた、黒髪の女性に声をかけた。


「チヒロ様も休憩ですか?」

「はい! もう、眼福で……ヤバいです」

「そうですか、良かったですね」


興奮で頬を赤く染めている千裕の言葉を、さらりと流す。

沙織の親友の千裕も、カリーヌの希望もあり、ガブリエルとステファンの配慮で招待されたのだ。

ミシェルも、向こうの世界で会っているので、この変わった話し方にも慣れてきた。


「サオリ姉様は?」

「ふふ……。シュヴァリエ様と庭に行きましたよ。なかなか会えないみたいなので、邪魔したくなくて」


千裕の言葉に、――ズキッとミシェルの胸は疼く。


「あ……、ごめんなさい」


千裕は、ミシェルが沙織を好きな事を知っていたのに……軽率だったと後悔した。美しい表情を崩さないが、ミシェルの性格は知っている。


「何がでしょうか?」

「いえ、何でもありません。私、龍王様が推しだったんで、つい」

「推し?」

「えっと……。まさか、カワウソが……じゃなくてリュカが。そう、リュカがシュヴァリエ様だと知って、応援したくなっちゃって。私、小動物好きなんです」


千裕は、自分で何を言っているのか分からなくなり、焦りまくる。


「ああ、リュカの正体を」


ミシェルの言葉に、千裕はコクコクと頷いた。

向こうの世界で、シュヴァリエはリュカの姿だった事を思い出す。


「チヒロ様は、サオリ姉様が居なくなって……寂しくはないですか?」


ふと、ミシェルは訊いてみたくなった。


「そりゃ、さみしいですよ〜。でも、沙織が決めた事だし、こうして会わせてもらえたら充分です。ミシェル様は……」


と言いかけて、千裕は止めると話題を変えた。


「私、やりたい事が見つかったんですよ」

「やりたい事ですか?」

「はい。保育系に進もうと思って。えっと、こっちでは確か、無いですよね? 小さな子供だけの学校って」

「小さな子供の学校ですか? ありませんね……」

「私達の世界には、幼稚園とか保育園とかがあって。私、その先生を目指してみようと」


この『乙女ゲーム』の、龍王覚醒イベントで知ったシュヴァリエの過去。それがきっかけだったとは、口には出来ないが。千裕なりに、考えるところがあったのだ。


へへっと笑った千裕の表情を見て、きっと子供に好かれるだろうとミシェルは思う。

その学園ではない、小さな子供の為の学校に興味を持った。貴族には必要ないかもしれないが、平民の間ではどうなのだろうか――と。


そして、詳しく千裕に教えてもらう。

ミシェルは、次期領主の顔になって食い入る様に話を聞いていた。


「ミシェル様が私の世界に来たら……今度は、私が案内してあげますよ」

「それは、いい案ですね」

「あ、でも! その時は、外見を変える魔道具をステファン様に借りて下さいね! 尊死が続出したら困るんで」

「尊……? わかりました」


よく分からないが、沙織と千裕の外見と違うと言いたいのだろうと理解した。


「では、チヒロ様。明日は、王都の祭りを案内しましょう」

「はいっ、お願いします!」


ミシェルは手を差し出すと、千裕をエスコートして会場へ向かう。

胸の疼きは、いつの間にか和らいでいた――。



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