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「どうされましたか?」
慌ててるその人も、またスーツ姿。
年齢は……私より少し上くらいかな?
メガネをかけていて、とても真面目そうな印象を受ける。
「えと、ここに、180cmの長身で、かなりハンサムな男性なんですけど、来ませんでしたか?」
息を切らせながら、その人は言った。
「あ、それ! きっとさっきの人ですよ! つい今出ていかれましたよ」
果穂ちゃんがすぐに答えた。
「そうでしたか。良かった……なら、会社に戻ったんですね。連絡しても通じなくて。ここにいる時はスマホの電源を切ってるみたいで」
「あの! あの人って……どういう人なんですか?」
果穂ちゃんが身を乗り出して、興味津々に聞いた。
「いつも社長が大変お世話になっております」
――社長?
あの人って、社長なの?
「え、え、社長さんって、どこの社長さんなんですかぁ?」
果穂ちゃんは、レジ台から落ちるんじゃないかっていうくらい、ますます身を乗り出した。
「失礼しました。こちらにはいつもお世話になっていますので、社長の分と私の分の名刺をお渡しします。私は秘書の前田と申します。もし社長と連絡が取れず、急用がある場合は、申し訳ありませんがこちらに連絡させていただいてもよろしいでしょうか?」
2枚出した名刺のうち1枚は、目の前にいる秘書さんの物。
そして、もう1枚には……
『榊 祐誠(さかき ゆうせい)』
と書いてあり、肩書きは代表取締役社長となっていた。
「ちょっと待って!! この榊グループって、もしかして百貨店とかを全国展開してるあの榊グループですか?」
果穂ちゃんが、目を輝かせて聞いた。
「はい、その通りです。本社が車ですぐ近くですので、こちらにお邪魔することが増えまして。ただ、かなりお忙しい方なので、連絡が取れないのは非常に困るので……」
「ですよね、わかりました。お店に連絡を下さればお繋ぎします」
私は、困り顔の秘書さんに言った。
「ありがとうございます。本当に助かります。では、失礼致します」
前田さんという秘書さんは、爽やかに店を出ていった。
「雫さん! あの人、イケメンな上に社長だなんてすごくないですか? しかも、あの超超有名な榊グループの! そんな人が『杏』に来てるなんて嘘みたいですね」
果穂ちゃん、興奮し過ぎ。
「た、確かに、榊グループは有名過ぎてすごいよね。百貨店、たまに行くよ」
「もちろん私も行きますよ~ちょっとこれは大事件ですよね。あんこさんにも報告しなきゃ」
って、今、仕事中。
果穂ちゃんはかなりミーハーだな。
だけど……
大企業の社長であんなに素敵だったら、当然、結婚してるか彼女がいるだろう。
パートナーは、きっと、とびきり美人なんだろうな。
って、ダメダメ! 私までそんなつまらないこと考えてる場合じゃない。
仕事、しなきゃ。