(これはもう断われない)と、今度こそ覚悟を決め、「入ります……っ!」と、宣言をした。
「そんなに気を張らなくても、大丈夫だから」
言われるそばから、彼に抱かれた肩がビクッと震える。
「もし嫌なら、やめようか?」
「嫌じゃなくて……」と、首をふるふると横に振る。
「ただやっぱり、恥ずかしくって……」
うつむく私の頭を、彼が手の平で優しく撫でると、
「じゃあ来れたら、おいで。お湯はすぐに溜まるんで、僕は先に入っているから」
そう言い置いて、浴室へ立って行った──。
部屋に一人になり、悶々と考える──(お風呂、一緒に、入る……)あまりのテンパりぶりに、言語能力までたどたどしくなる私……。
どうしよう……入った方がいいんだろうけど、とんでもなく恥ずかしい……。
お風呂に彼と二人で浸かっている姿を想像するだけでも、頭のてっぺんからフシューと湯気が出そうだった。
そりゃあ彼とはもう経験済みで、既に全裸になることには耐性もあったけれど、それとこれとは別って言うか……。
だって、裸で、彼と……「きゃあー」と、小さく声を上げて、赤らむほっぺたを両手で包む。
むーりー……。
お風呂はまだ私にはハードルが高い気がして、やっぱりやめようかとも思いかけたのだけれど、それじゃあ温泉旅行での約束をたがえるみたいにも思えた。
だいたい約束をしたのは、私の方からだったんだし、ここはきっちりとけじめをつけないとだよね……。
よし……! と、弾みをつけるようにして立ち上がると、私は彼のいるバスルームへ向かった──。
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