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『初音ライダー剣』
第11話
“光明”
学校での授業中、鏡音リンは考え事で頭が一杯だった。仮面ライダーとなったはいいが、自分の意思ではなく、誰かに操られてやったことだ。しかも、自分の中にもう1人の人格ができてしまった。これからどうすればいいだろう、そればかり考えてしまう。だが、いくら考えても答えは出て来ない。誰かに話しても答えは出そうにない…と思ったその時、ふと考えが浮かんだ。
リン「よし!これで行こう!」
教師「ん?どこに行くんだ?」
リンは考え事を募らすあまり、思い込みが爆発して授業中に思わず立ち上がって叫んでしまった。教師のツッコミと共に、周囲の視線がリンに集まる。赤っ恥だ。
リン(あ…やべ…)
リンは思わず赤面し、速攻で自席に座った。
リン「私をBOARDに入れてください!」
リンは学校が終わった後、直行でBOARDへ急行し、ミクたちにBOARDに入れてもらえるよう懇願する。
ミク「いきなり何で?」
リン「BOARDに入って、仮面ライダーとして皆と一緒に戦いたいんです!誰かに言われたことじゃなくて、ちゃんと自分の意思で!」
リンは自分の考えでBOARDに来て、自分の意思でライダーとして戦いたいと言う。その眼差しは真っ直ぐだ。だが、現実はそう生易しくない。
キヨテル「許可できません。」
キヨテルはリンの申し出を一蹴する。しかし、リンも簡単には引き下がらない。
リン「何でですか?子供だから…?」
キヨテル「それもありますが、第一は危険だからです。君の言うライダーとはレンゲルの事ですよね。レンゲルは暴走のリスクが高いからです。」
リン「でも、戦力不足なんでしょ?他にいないんでしょ?ライダー…」
キヨテル「確かに戦力は不足していますが、爆弾を抱えるよりはマシです。それに、アンデッドとの戦いは君のような少女には想像を絶する過酷なものです。君がそれに耐え得るとは思えませんが。」
リン「それは…」
リンは言葉を失くす。確かに自分には、生死をかけた過酷な戦いに耐えられる自信はない。だが、それでもやりたい。いや、やらなければならないことだ。リンはそう考えてBOARDに来た。
リン「…確かに、戦場は怖いかもしれない。でも、ライダーになった以上、私がやらなきゃいけないって思ってます。だからやらせてください!お願いします!」
リンは至極真面目な目線で正面を見る。その視線はまずMEIKOを動かした。
MEIKO「…分かった。」
リン「へ?」
MEIKO「チーフ。この子のこと、私に任せてもらえませんか?少なくとも、戦力になるまでは。」
ミク「そうだね。MEIKO姉さんが面倒見てくれるなら安心だよ。私もできることならサポートするから。」
リン「MEIKO姉…ミク姉…」
MEIKOとミクはリンをフォローする。リンは嬉しくて泣きそうになった。
キヨテル「…分かりました。ただし、1人立ちは当分させられません。ミクかMEIKOに付き添わせて、様子を見ます。」
キヨテルもMEIKOに賛同し、ミク/ブレイドかMEIKO/ギャレンの下に付けて様子を見る、ということで合意した。
MEIKO「今日は何の準備もできてないから、明日から訓練しましょう。生半可にやって戦死しないようにビシバシしごくから、覚悟しててよ?」
リン「うん!」
ミク「やったね、リンちゃん!」
リン「うん、よろしく!」
リンはBOARDへの仲間入りが認められて嬉しそうにはしゃいだ。
翌日、リンとMEIKOはバッティングセンターに来た。
リン「…何でバッティングセンター?」
MEIKO「まずは動体視力を鍛えるのよ。私もギャレンになる際にしたからね。」
MEIKOはリンに何故バッティングセンターに来たか教えると、早速球速を150㎞に設定し、投球を開始する。
MEIKO「3!」
MEIKOは時速150㎞で飛んでくるボールを素手でキャッチした。キャッチしたボールには「7」と書かれていた。
MEIKO「…チッ。」
リン「…マジ?」
MEIKOはキャッチしたボールの番号を外したことが少し悔しかった。だが、リンはMEIKOが150㎞で飛んできたボールを素手でキャッチしたことにただ驚くばかりだった。
MEIKO「いきなりだけど行くわよ、ほら。」
MEIKOはリンを打席に立たせて、ボールを打ち出す。
リン「ひゃっ!」
リンは150㎞で飛んでくるボールをキャッチするどころか、怖くなって身を反らして回避した。
MEIKO「逃げてどうすんの!」
リン「…ムリじゃね?」
MEIKO「あんた、自分が言い出したんでしょ!一緒に戦いたいって!」
リン「!」
MEIKOの言葉でリンは我に返り、再び打席に立つ。そして、150㎞で飛んでくるボールを素手でキャッチしようとする。だが、当然できなかった。しかし、リンは諦めずに何度もトライした。そして、しばらくした後、リンは遂に150㎞のボールを素手1つでキャッチすることに成功した。
リン「やった!見た、MEIKO姉?」
MEIKO「やるじゃない。でも、これからよ。次はボールの番号を当ててみて。」
リン「う、うん!」
MEIKOは次のステップとして、リンに飛んでくるボールのナンバーを言い当てるよう指示する。そして、早速来た。リンは150㎞のボールを目で追ってボールのナンバーを当てようとする。だが、追うことができない。そう思っている間に、ボールはアッと言う間に打席に飛んできて、奥のネットに当たった。
リン「う…」
MEIKO「簡単に諦めないで。次、行くわよ!」
MEIKOはリンに次を指示する。リンは再び打席につき、ボールを受け止められるよう構える。
リン「…2!」
リンはボールのナンバーを言ってキャッチしようとするが、ボールはリンの手を逸れて奥のネットにぶつかってしまう。そのボールのナンバーは「4」だった。
リン「…難しい。」
MEIKO「ボールの動きをよく見て!次!」
リンは続けて打席に立つ。だが、MEIKOの言うように、150㎞で飛んでくるボールの動きを捕捉することは容易ではない。リンはまたしても、ボールのナンバーを読み外した。
MEIKO「ボールの動きに体の動きのリズムを合わせるの!」
リン「う…うん!」
リンはMEIKOのアドバイスを受け、もう1度打席に立ってボールを追う。しかし、またもや読み取れず、ボールはネットに激突した。
リン「う…」
MEIKO「ぶつかるのが怖くても目を放すな!」
リンは自信を無くしかけてきた。そんなリンにMEIKOはめげずにアドバイスを送り、激励する。
リン「…よし!」
リンは諦めずに打席に立つ。そして、そのボールのナンバーを読み取ってキャッチする練習は続いた。
リン「…疲れた。」
動体視力を鍛えるトレーニングは2~3時間続いた。リンは体力以上に視力と神経を酷使し、精神的にドッと疲れた。現在は大の字に倒れ、休んでいる。
MEIKO「お疲れ様。」
リン「…ありがと。」
MEIKOは倒れているリンにアクエリアスを渡す。リンは起き上がってこれを受け取って早速、蓋を開けて飲む。
リン「ねえ、MEIKO姉。」
MEIKO「ん?」
リン「何で私の面倒を見てくれる気になったの?」
リンはMEIKOが自分の面倒を見るようになった理由を聞く。
MEIKO「…幼馴染がいたけど、死んじゃったのよ。アンデッドに殺されて、ね。」
リン「へ…!?」
MEIKO「ミクを庇ったのが原因だけど、それ以前に、アイツは凄く優しくて、お人好しで、自己犠牲の傾向が強かった。だからアイツはライダーになって、大事な人たちを守ろうとした。でも、あの性格が災いしたのか、アイツはミクを庇って死んだ。だから、あんたにアイツと同じことになってほしくないの。」
MEIKOは以前、アンデッドとの戦いで殉職した幼馴染・KAITOのことをリンに聞かせる。
リン「…ふーん…」
リンは少し複雑な気持ちで返事する。MEIKOは至極真剣だ。それはリンも分かる。MEIKOはさらに続ける。
MEIKO「今、ライダーになってアンデッドと戦えるのは私とミクとあんただけ。あんたが戦力になるまで、私が鍛えて、守ってあげるから。」
リン「…」
MEIKOはリンを鍛える理由を話す。だが、リンはその話を聞いて考えが振り出しに戻った気がした。自分が戦う明確な理由が分からなくなってきたからだ。
翌日、リンはBOARDに来て早々、戦う理由が分からなくなったことについて問うてみた。
MEIKO「戦う理由が分からなくなった?」
リン「うん。昨日のMEIKO姉の話を聞いて何か…ね。」
ミク「何で?」
ミクは早速リンに問う。
リン「MEIKO姉、言ったよね。幼馴染の人を失くしたから、その二の舞をしたくないっていう理由で私を鍛えてくれるって。でも私さ、MEIKO姉みたいに大事な人を失くした経験がないから、その辺が分かんないんだ。」
ミク「だったら、今いる大事な人たちを守るために戦う。それでいいじゃない。」
リン「そう言われてもさ、リン、これまでそう辛い目にあったことないから、ああいう話されても何か実感湧かなくてね…」
戦う理由を見失いかけているリンに、ミクは1つ提案をする。だが、リンの気は晴れない。
MEIKO「…まさか、辛いことがあった方が良いなんて言うの?」
リン「そうじゃないよ。ただ、戦う理由が見つかってないの。何かないかな、ねえ?」
リンは自分が戦う理由を教えてほしいと言う。だが、ミクもMEIKOも、もちろんウタもキヨテルも教えられない。
キヨテル「…それは自分で見つけるしかないですね。我々も教えられるものではありません。」
ウタ「てゆーか、そもそも他人に教えてもらうモンなのかな、そういうのって。」
5人は首をかしげる。そんな中、アンデッドサーチャーに反応が鳴った。
ウタ「ん?アンデッド?」
ウタは早速サーチャーを見る。街中の高層ビルの付近にアンデッドの反応をキャッチした。
MEIKO「よし、早速行きましょう!」
ミク「うん!」
MEIKOとミクは勇んで出撃の準備をする。しかし、リンは未だに戦う理由を見つけられずにいた。
キヨテル「リンも一緒に出撃してください。もちろん、変身して戦っても結構ですよ。」
リン「…いいんですか?」
キヨテル「ええ。戦う理由を見つける良い機会かもしれません。実戦経験にもなりますし、是非ともです。ただし、MEIKOとミクの言うことをよく聞いて、無茶して突出し過ぎないように。」
キヨテルはリンに良い経験になるかもとアドバイスし、戦闘への参加を許可する。
バイクで街中へ向かう3人はアンデッドの反応があったというビルの付近にバイクを止めてビルへ入る。
リン「どこ?アンデッド…」
MEIKO「落ち着いて。まずはビルの中の人たちを非難させましょう。」
MEIKOはアンデッドを探そうと躍起になっているリンを制止し、まずは周囲の人々の避難を優先するよう指示する。
MEIKO「ミクはアンデッドを探して。私とリンで皆を非難させるから。」
ミク「分かった!」
ミクはアンデッドの反応があったという地下へ行く。MEIKOとリンはビルの中の人々を避難誘導する。そして、地下に到着したミクは早速モールアンデッドを見つけ、ブレイバックルを取り出す。
ミク「変身!」
「TURN UP」
ミクはブレイドへと変身してブレイラウザーを抜刀し、モールアンデッドに斬りかかる。
その頃、MEIKOとリンは避難者たちを安全圏まで誘導していた。中には高齢者や幼児連れの親子もいた。
リン「とりあえず、全員ビルから避難させたけど、これで大丈夫かな?」
MEIKO「ええ、ここまで来れば上出来よ。」
MEIKOはリンの避難誘導の手並みを褒める。
避難者「ありがとうございます。」
リン「へ?いや…」
ビルから避難した人たちは口々に礼を言う。リンは彼らの礼を聞いて、何やら使命を1つやり遂げたような不思議な気持ちになってきた。
リン(そうか…これがミク姉の言ってた、人を守ることの…)
リンは次第に、ライダーとしてやるべきことを理解した。この人たちを守りたい。自分の行いに感謝してくれた人たちを。それが仮面ライダーの使命だと。その使命感が、リンの精神(こころ)に火をつけた。
リン「MEIKO姉、行こう!ミク姉のとこに!」
MEIKO「ん?ええ、行きましょう!」
MEIKOは戦う覚悟を決めたリンを見て驚いたが、同時に、リンが戦いに前向きになったのを見て嬉しくなった。2人は変身ベルトを取り出し、腰に装着する。
MEIKO「見つけたの?戦う理由を。」
リン「うん!変身!」
MEIKO「変身!」
「OPEN UP」 「TURN UP」
リンはスピリチアエレメントをくぐってレンゲルへ、MEIKOはオリハルコンエレメントをくぐってギャレンへと変身し、ビルの地下へ向かう。
ビルの地下では、ブレイドがモールアンデッドに苦戦していた。モールアンデッドは地中へ潜って地下からブレイドを攻撃してくる。ブレイドが接近しても、モールアンデッドは地中へ逃げてしまう。
ミク「くそ、攻撃が…」
リン「ミク姉!」
苦戦するブレイドにレンゲルとギャレンが救援に駆け付けた。
ミク「気をつけて!地中から攻めてくる!」
MEIKO「分かった!」
ブレイドの話を聞くと、ギャレンは♦8のラウズカードを取り出してレンゲルに渡す。
MEIKO「これを使って!」
リン「ん、分かった!」
レンゲルは渡されたカードを早速レンゲルラウザーでラウズする。
「SCOPE」
リン「!」
レンゲルは「SCOPE」の暗視能力により、地下の暗がりの中でも地中から的確に攻めてくるモールアンデッドの動きが見えた。モールアンデッドが地中から接近してきたその時、レンゲルはレンゲルラウザーの刃を地中に突き刺し、モールアンデッドを攻撃する。モールアンデッドはこの一撃が急所に響いたのか、地中から出てきて、背中を向けて逃げようとした。
MEIKO「今よ!」
リン「うん!」
ギャレンは今が攻め時だと判断した。レンゲルは♣5と♣6のラウズカードを取り出し、ラウズする。
「BITE」
「BLIZZARD」
2枚のカードの絵柄がレンゲルにオーバーラップされ、レンゲルは力が漲る。
「BLIZZARD CRUSH」
リン「でええええいッ!」
レンゲルは高く跳び上がり、両足に冷気のエネルギーを纏い、モールアンデッド目掛けてクロスキックを蹴り込む。モールアンデッドはレンゲルのクロスキックで大きく蹴り飛ばされ、倒れてアンデッドクレストを開いた。レンゲルはそこに空のラウズカードを投げ入れ、モールアンデッドを封印する。
リン「…やった…」
ミク「やったね、リンちゃん!」
MEIKO「やるじゃない!」
レンゲル/リンは初の勝利と、戦う目的と喜びを見出し、心が躍った。