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印 南 幽 . 也くろめ .
ひだしき
ホストパロ
監禁表現あり
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氷鷹 零:No.1ホスト
一ノ瀬四季:ボーイ
以上の設定が行ける方は
START
──────────────────────
夜の街に灯るネオン。
その中心で、ひときわ異質な存在感を放つホストクラブ――「暗鬼」。
俺、一ノ瀬四季は、2ヶ月前からそこでボーイとして働きはじめた。
働き始めた理由?
そんなの、給料がいいからに決まってる。
一ヶ月働けば、三ヶ月分の生活費と学費をまとめて払えるぐらいの金額が稼げる。
常に金欠気味だった大学生の俺にとって、これ以上ない好条件だった。
講義を終えて、そのまま夕方に出勤する。
店内の掃除を済ませ、仕入れた酒を冷蔵庫に運び、グラスを一つずつ丁寧に磨く。
指先に神経を集中させながら、最後の一つに手を伸ばした、その時――
軽い衝撃が、頭に落ちてきた。
「よー、四季」
聞き慣れた声。
振り返ると、そこにいたのは
この店の看板であり、絶対的No.1ホスト、氷鷹零。
無造作に俺の頭に手を置いたまま、当たり前みたいな顔で挨拶してくる。
「氷鷹さん!こんばんは!」
俺はすかさず笑顔を作り、弾む声でそう声をかけた。
「今日も接客、頑張ってくださいね!」
軽く背中を押すように言葉を添える。
そのまま、何でもないことのように背を向けて、グラス磨きに戻った。
いつも通りの動き。
いつも通りの距離感。
――の、はずだった。
けれど。
背中に、視線が刺さる。
他の誰とも違う、妙に温度の低い、それでいて逃がさないような視線。
氷鷹さんのものだと気づかないほど、俺は鈍くない。
……ただ、その意味までは、まだ分かっていなかった。
営業時間になると、
俺は店の扉を軽やかに開ける。
姫たちが入りやすい空気を作るための、いつもの役目だ。
その直後。
氷鷹さんの卓は、開店から一分も経たずに埋まった。
――相変わらず、人気だな。
内心でそう感心している間にも、次々と姫たちが来店してくる。
ボーイである俺は、案内に回り、各卓へ酒やシャンパンを運び続けた。
慌ただしく動き回る中、先輩ホストの卓にシャンパンを届けた、その時。
「ねえ、可愛い顔してるね。食べちゃいたい」
酔った姫に、そう声をかけられる。
「え!? いや、可愛くないっすよ!」
思わず声が裏返る。
慌てて否定しながら、その場を離れて次の卓へ向かう。
――が。
「四季くん、ほんと可愛い〜」
「その反応、反則でしょ」
次の卓でも、そのまた次でも、似たような言葉が飛んできた。
そのたびに顔が熱くなる。
どう返していいか分からず、結局また否定するだけ。
……なのに。
どうやらその反応が、姫たちには相当“刺さっている”らしい。
(勘弁してくれ……)
内心でぼやきながら、次の卓へ。
「ねえ、顔赤いよ? ほんと可愛い」
また同じように言われて――
その瞬間。
ぞくり、と背筋が冷えた。
反射的に振り返る。
視線の先。
そこにいたのは、氷鷹さん。
いつもと同じ場所に、いつもと同じように座っているはずなのに。
――目だけが、違った。
刺さるように鋭くて、逃げ場を与えない視線。
まるで、何かを確かめるように。
あるいは――
周りを牽制するみたいに……。
その後も姫達には散々可愛がられた。
時には過度なボディータッチをされることもあって────
正直、かなり堪える。
(……今日は、さすがに疲れた)
心の中で小さくこぼしながら、重たいまぶたを指でこする。
疲労に襲われながらも、洗い終えたグラスを一つずつ棚へ戻していった。
業務を終え、着替えも済ませて店を出ようとした、その時だった。
いつも開いているはずの裏口が――閉まっている。
「え、ちょ……開いてねぇの?」
思わず声が漏れる。
ノブに手をかけて回すが、びくともしない。
軽く押してみる。
引いてみる。
それでも、開かない。
「……は?」
一気に胸の奥がざわつく。
焦りがじわじわと広がっていくのを感じていた。
その時、
「四季、そこ開かねぇのか」
不意に、背後から声が落ちてきた。
低く、よく通る声。
振り返らなくても分かる。
――氷鷹さんだ。
「え、あ、はい……なんか開かなくて」
ノブを握ったまま振り返ると、氷鷹さんは少しだけ眉を寄せてドアを見た。
無言のまま、代わりにノブへ手をかける。
回す。押す。引く。
――やっぱり、開かない。
「……鍵、かかってんな」
「え、マジすか」
一気に力が抜けて、肩が落ちる。
「どうすんだよこれ……」
小さくぼやくと、氷鷹さんは一拍置いてから口を開いた。
「正面回るか」
「いや、もう閉まってる時間じゃないですか?」
「……ああ」
短く頷く。
そして、ポケットから車のキーを取り出した。
「送る」
「え?」
思わず聞き返す。
「俺の車、そこ」
顎で外を示す氷鷹さん。
相変わらず説明が少ない。
「いや、でも……悪いっすよ」
「別に」
即答。
「方向、同じだろ」
「え、なんで知って――」
言いかけて、やめる。
この人、そういうとこある。
「……いいから来い」
それだけ言って、先に歩き出す。
断る隙もない。
店の外。
夜の空気が、さっきより少し冷たく感じる。
氷鷹さんの後ろを追いかけて、停まっていた黒い車の前で足を止めた。
「乗れ」
助手席のドアが開く。
短い一言。
それだけなのに、妙に逆らいづらい。
「……失礼します」
小さく呟いて、車に乗り込む。
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
────────────────────────
どうやら、あの後眠ってしまっていたらしい。
ぼやけた視界の中で、最初に目に入ったのは――
月光に照らされ、銀色に淡く光る何か。
そして、その下に広がる、無機質な灰色の床。
(……なんだ、これ)
ゆっくりと瞬きを繰り返す。
焦点が合っていくにつれて、違和感がはっきりしてくる。
――少なくとも、車内じゃない。
そう確信した瞬間。
視界が、一気に冴えた。
両腕と右足には、冷たい拘束具が嵌められていた。
そこから伸びる鎖が、確実に自由を奪っている。
わずかに動こうとするだけで、金属音が乾いた音を立てた。
視線を巡らせる。
部屋は狭く、無機質だった。
壁の一角には、鉄格子で覆われた小さな窓がひとつ。
そして――
ぽつんと置かれたベッドが、ひとつ。
場違いなくらい、それだけがやけに整っている。
恐る恐る触れてみると、
……柔らかい。
まるで雲みたいに、妙にふかふかだった。
その違和感が、逆に気味が悪い。
いま一度、部屋をよく観察してみる。
床は打ちっぱなしのコンクリート。
目を凝らしてみても、下へ続くような隠し扉は見当たらない。
部屋の出入口は、分厚い鉄製のドアがひとつ。
外側からしっかりと施錠されているらしく、びくともしなかった。
窓に目を向ける。
小さなそれは、鉄格子で覆われている。
しかも新しい。錆びついている様子もなく、壊せる気配はない。
(……詰んでるだろ、これ)
胸の奥がじわりと冷える。
どうにか脱出できないかと、必死に思考を巡らせていた、その時。
――ぎぃ、と。
部屋の重たいドアが、ゆっくりと音を立てて開いた。
そこにいたのは――
「……氷鷹さん、?」
思わず名前を呼ぶ。
けれど、返ってきたのは、いつもと同じ“氷鷹零”ではなかった。
ゆっくりと部屋に足を踏み入れるその姿は、変わらないはずなのに。
視線だけが、違う。
芯まで凍りつくように冷たくて――
それでいて、妙に熱を帯びている。
逃がさないとでも言うように、まっすぐに俺を捉えていた。
「……やっと、起きたか」
低く落ちる声。
安堵にも似た響きが混じっているのに、どこか歪んでいる。
一歩、近づく。
鎖が小さく音を立てた。
その音に視線を落とした氷鷹さんは、わずかに目を細める。
「暴れなかったんだな」
まるで、それを確かめるように。
「いい判断だ」
静かに、そう言った。
背筋がぞくりと粟立つ。
「……どういう、ことですか」
喉がうまく動かない。
それでも絞り出した声に、氷鷹さんはわずかに首を傾けた。
「分からないか?」
一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
そのたびに、逃げ場が削られていく。
「……お前、無防備すぎる」
ぽつり、と落ちた言葉。
怒っているようにも聞こえるし、責めているようにも聞こえる。
それに────
「触られても、笑ってるし」
視線が、じわりと絡みつく。
「誰にでも同じ顔する」
その声は低い上に、冷たくて、
心が折れかけている俺を、さらに萎縮させた。
そんな俺に構わず、
「……見てて、気分悪かった」
吐き出すように続けながら、手が伸びる。
逃げられない距離で、頬に触れられた。
手のひらが、頬にゆっくりと張り付く。
まるで、俺をここに閉じ込めておくかのような、粘着質な手付き。
「だから、ここに連れてきた」
当たり前のことのように言う。
「これで、他のやつに触られない」
そう口にした時、わずかに口元が緩む。
それは笑みの形をしているのに、どこか歪んでいた。
「……な?」
確認するように、囁く声。
その目は、相変わらず――
逃がすつもりなんて、最初からないみたいだった。
────────────────────────
どれくらいの時間が経ったのか、もう分からない。
昼も夜も曖昧になって、
ここで過ごす時間だけが、やけに鮮明に残っている。
最初の頃は、必死に抵抗した。
逃げようとして、拒んで、声を上げて――
そのたびに、余計に深く押さえつけられた。
怖かったはずなのに。
苦しかったはずなのに。
それなのに、今は――
(……足りない)
ぽつりと、そんな考えが浮かぶ。
氷鷹さんが触れてくる温度。
名前を呼ぶ低い声。
逃げ場なんて最初からない距離。
それが、ないと落ち着かない。
食事も、全部あの人が用意する。
「ちゃんと食え」
そう言って、手ずから口元まで運ばれる。
最初は抵抗していたはずなのに、
今はもう、自然とそれを受け入れている自分がいる。
夜になれば、必ず隣にいる。
同じベッドに押し込まれて、
腕の中に閉じ込められる。
逃げられないはずなのに。
そのはずなのに――
「……ここ、あったかい」
気づけば、そんなことを思ってしまう。
抱きしめられる力が、少しでも緩むと、落ち着かない。
離れそうになると、無意識に服を掴んでしまう。
「……どこ行くんすか」
そんな言葉が、自分の口から出ることもあった。
「行かねぇよ」
低い声でそう言われて、また抱き寄せられる。
その瞬間、胸の奥が、じわりと満たされる。
(……おかしいだろ)
頭では、分かっている。
ここは普通じゃない。
この関係も、まともじゃない。
それなのに――
氷鷹さんがいないと、
息がうまくできない。
俺は、
氷鷹さんと言う名の
愛に飼い慣らされた。
────────────────────
いかがでしたか?
今回は初めてのひだしきに挑戦してみました!
零くんの口調がわかってないので、所々変かもしれませんが、大目に見ていただけると嬉しいです!笑
それではまた別のお話でお会いしましょう。
バイバイ
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