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コメント
4件
なるほどねえー!!✨️ どっちがカミサマか分かんなくなりそー笑笑

次は神様と人が逆になってますね✨ この作品も面白そうです!
俺が小さい頃。
多分、小学校に上がりたての頃だ。
両親に連れられて行った神社の鳥居の上に黒と緑を基調とした着物?のようなものを着た男の人がいた。
両親に、鳥居の上に人がいると言ったけど信じてもらえなかった。
また見えないお友達?と母親に言われたのを覚えている。
神主さんと話をしている両親と暇になった俺は鳥居の下に行ってその人を見上げて声をかけた。
『そんなとこにいたら危ないよ。落ちたら怪我しちゃう』
そう言うとその人物は驚いたようにこっちを見てきた。
『俺のこと視えるの?』
低めの声で柔らかく少しだけ舌足らずな口調。
黒い布で顔を隠しているその人。
動いたり、風で揺れるたびに見えるうっすらと浮かべられる笑みと、一瞬だけ見えたこの世のものとは思えないくらい綺麗な緑の目。
子供ながら人間でないと思った。
そして一目惚れだったと。
そこからは子供だったのもあって、その人の興味を惹こうと学校終わりに毎日のように神社に通った。
今思えば単純だったなと思うし、マセガキだったなと思う。
そのくらいその人に好かれたくて、興味を持って欲しくて学校での話や家での話。
友達と遊んだ話や猫の話をたくさんした。
その人は、相槌を打ちながら時々質問しながら俺の話を聞いてくれていた。
クラスメイトや上や下の学年の女の子から告白をされるけど、あの人以外に興味のなかった俺はそれを断っていた。
男友達には罪な男だなーと揶揄われていたけど、実際興味がないのだから仕方ない。
俺のそれが視える体質と気付いたのは小学校の中学年になってからで。
そしてあの人があの神社の神様だったんだというのは引っ越してから知った。
父親にお前が視ていたのは神様だったのかもなと言われ、すとんと胸に収まるほど納得できた。
引っ越しするまで、毎日のように神社に遊びに行った。
また来たの?と呆れつつも嬉しそうに声を弾ませるその人。
短い黒髪と着物の襟からのぞく項が美味しそうに見えて食べていいと聞いた時のあの神様の驚き方は可愛いなと思っていた。
神様にもマセガキと言われてしまったし。
俺の前で絶対に布を外さなかった神様の緑の目をもっとしっかり見たくてそれを捲ろうとしたらやんわりと怒られたのも今になればいい思い出だ。
親の都合で引っ越ししなければならなくて。
子供の無力さを知った。
さよならとまた戻ってくることをその人に約束すると、待ってるねと優しく頭を撫でてくれた。
その人にとってはただの気まぐれだったのかもしれない。
住む世界が違うから。
きっと俺のことなんて忘れてしまうんだろうなと悲しくもなった。
だから高校生になってこっちに1人で戻って来た時あの人はいるだろうかと、はやる気持ちを抑え神社に向かった。
散りかけの桜吹雪の中、その人は鳥居の上に座り、何一つ変わらない姿で空を眺めていたのだ。
ふと視線を落としたその人からのぞく形のいい唇が柔らかく上げられて俺の前に音もなく降り立つ。
「大きくなったねぇ」
少しだけ俺を見上げるその人、俺の神様は変わらない声で優しく言った。
「えーっと、高校生くらい、かな?」
揺れる布から見える緑が俺を見ている。
子供の頃見たのと変わらない綺麗な緑。
この人を、自分に縛り付ける方法をずっと考えていた。
自分のモノにすることだけを。
でも今はまだその時じゃない。
「神様は何も変わってないね」
「クロノアさんって呼ばなきゃね?もう子供じゃないし…いや俺からすればみんな子供みたいだけど…」
「トラゾーはずっと可愛いままだよ」
「まだそんなこと言ってる…神様を揶揄わないよ」
「ホントのことだから」
「ふふっ、クロノアさんはすごくかっこよくなったね」
手を握ると、人じゃない低い体温に目を細めた。
このひんやりとした身体が熱をもつのを考えただけで口角が上がっていく。
「また一緒に話ができて俺、嬉しいよ」
「俺もクロノアさんに会えて嬉しい」
人じゃない雰囲気。
儚げで畏ろしい。
早く堕とさないと、俺は置いていかれる。
そしてこの人に忘れられていく。
記憶の片隅にも残らない、有象無象と同じにされてしまう。
「ね、トラゾー」
「うん?」
「昔みたいにまた学校終わりに来てもいい?」
「!、勿論!俺もクロノアさんとお話ししたい」
子供みたいにはしゃぐトラゾーが可愛い。
でもこれだって俺のことをただの人間の子供としか思ってないからの反応だ。
自分の知らない話を聞かせてもらえるというだけ。
この神社から出ることができないトラゾーは、外のことを何も知らないし、この神社に縛られているのか無知だ。
本当に穢れを知らないカミサマ。
「いろんなこと、俺が教えてあげる。昔と違っていろんなこと覚えたし身につけられたからね」
「ふふっ、クロノアさんは偉いねー」
身につけてるもの全てを剥ぎ取って暴いてやりたいなんて思ってること、分からないんだろうな。
それを教えるのはもう少しの辛抱だ。
怖がらせたり怯えさせたらこの人は俺の前に二度と出て来てくれなくなっちゃうから。
「俺はいつまでもここにいるから、クロノアさんの都合のいい時においで。高校?は忙しいだろうし、クロノアさんかっこいいから女の子に好かれそうだもんね」
「俺は昔からトラゾーのことしか好きじゃない」
「ん、ふふっ、俺もクロノアさんのこと好きだよ」
手を伸ばして頭を撫でられる。
小さい頃からトラゾーが俺にしてくる癖。
「…うん」
この信頼とは違ったこの人から向けられる感情を失うのは惜しいけど、俺のモノにできない方が嫌だから。
「(この顔の布を剥ぎ取ってやりたい。素顔をきちんと見たい。どんな声で俺のことを呼んでくれるのか、どんな表情をするのか知りたい)」
「それにしてもホントに大きくなったね 」
「俺はもうちょっと高くなりたかったかな」
「えぇ?それ以上高くなると俺の首が痛くなるから今がちょうどいいよ」
布が揺れて隙間から見えた緑が細められる。
「クロノアさんは1人で戻ってきたの?」
「うん、両親は引っ越したとこから仕事で離れられなくて」
「わざわざこっちに戻ってきたの?」
トラゾーに会う為にね。
「大切なモノを手にする為にね」
「⁇そっか」
意味は今は分からなくていい。
いずれか分かることなんだから。
神よりも人の方が傲慢で強欲で自分勝手なんだって俺の神様に教えてあげないとね。