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大学生活が始まってから半年が経った。
同じ学科の人数が高校生の頃よりも多くて、まだ全員の名前が覚えられない。
わたしの長野明里という名前を覚えてくれた人はどれだけいるだろう。
でも、人気者にならなくたっていい。
親友と好きな人がいるから……――
「ねぇ、明香里。なにか感じない?」
「どうしたの? 和美」
授業が終わってから話し掛けてきたのは、親友の成瀬和美。
学籍番号がわたしの次で、入学式の日に仲良くなった。
「あの人にずっと見られてる気がするんだけど」
和美は不安そうな顔をしてその人の方を指差す。
少し離れたところに立って、私たちのことを見ているのは地味な男性だった。
どうしてこっちを見ているんだろう。
顔を合わせるのが初めてで、話したこともないというのに。
目が合ってぞくりとすると、その男性は会釈をした。
「あたしたちになんか用事でもあるのかな?」
「さっ……、さあ……」
「とりあえず聞いてみよっか」
「えっ? 別にいいよ。……って和美!?」
その男なんて無視してジュースを買いに行きたかった。
でも、いつも一緒である和美を放っておけない。
「ねえ、なんであたしらのことをじろじろ見てくるの? まじでやめて欲しいんだけど」
腕を組んだ和美が怒り混じりの声で地味な男性に話しかける。
わたしだったら、怖くてできないから勇気があって尊敬する。
地味な男性は俯きながらぼそぼそと呟くように返事をする。
「明香里と話をさせて欲しいって? あたしには用がないと……」
それから、地味な男性と屋上に向かい、深く頭を下げられた。……予想外の言葉とともに。
「長野さん、好きです!……付き合ってください!」
「無理です」
迷うことなくすぐに返事をして、和美の元へ向かった。
はじめて告白された……。
しかも、知らない人に。
嬉しいというより、驚いたという感情しかなかった。そういう意味で鼓動が早くなっている。
急いで和美のところに向かい、起きたことを話す。すると、手を叩いて笑われた。
「告られたってまじ?
だから、明香里のことをずっと見てたのね。あはははっ」
「知らない人に告白されるって怖すぎるよ……」
「誰がいるのかまだ覚えられないもんねー。
あたしもあの人のことまで知らないし、興味ないわ」
「よう、和美。今日も笑い声がうるさいな」
「げっ、拓海。聞いてたの?」
今度は好きな人が傍にやってきてドキドキする。
彼の名前は、戸川拓海。
学籍番号がわたしの前で、プリントを配布する時や授業で同じグループになったことがある。
話した時にからかわれたことがあったけど、優しくて、明るくて、かっこいい人だ。
「和美の下品な笑い声なら聞こえた」
「それだけならよし」
「なんだよ。教えろって」
「やだ。ねっ、明香里」
「うっ、うん……」