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「ん……? 長野さんは和美の味方?」
「今、明香里がうんって言ったの聞こえなかった?」
「ごめん。声が小さくて聞こえなかった」
心がズキッと痛むけど事実だ。
わたしは和美のように自信を持って声を出せない。
「まったく、失礼なやつ。明香里に謝りなさいよ」
「ごめんね」
拓海くんは頭を下げてからそう言って、無邪気な笑顔をみせてくる。
今日もかっこいい。怒っていたとしてもすぐに許してしまうだろう。
「次の教室に行こう、明香里」
「その前にお手洗いに行っていい?」
「あたしは行かなくても大丈夫だけど……。外で待ってるね」
休み時間にお手洗いに行く時、和美にいつもついてきてもらっている。
わたしは、ひとりで行動するのが怖かった。学校を離れたら平気だけど。
順調に大学生活を送れているのは和美のおかげだった。
他に話せる女性も数人いるけれど、信じられるのは和美だけ。だから、本音を話そうと思った。
大切なことをまだ話していないから……――
「この服、めっちゃ可愛い。あたしに似合うと思わない?」
「和美に似合うよ」
大学の授業が終わったあと、駅にあるショッピングモールで和美と買い物をする。
キラキラしていて派手だなと思う服を選んで、似合っているか確かめる。とても楽しそうだ。
わたしは服に興味がないから、その姿が羨ましく思える。
「デートに着ていきたいなー。
でも彼氏がいないからやめておこうかな」
「和美は美人だからすぐに彼氏ができるって」
「ええー。ないない。
だって、拓海に下品な笑い方をするって言われたんだよ?
そんなあたしに彼氏ができるわけないって」
和美は拓海くんと同じ高校出身だ。
知り合いだから、お互いに呼び捨てで呼んでいるんだろう。……たぶん。
「あの……、和美。
買い物が終わったら、カフェに寄らない?」
話したいことがあるから……。
「オッケー。やっぱりこの服買ってくる」
買い物を終えたわたしと和美はカフェに行って、シナモン入りのコーヒーを頼んだ。
ボックス席に座って、ふたりでスパイスの香りを楽しむ。
「期間限定のものって試してみたくなるよねー。
シナモンとかなかなか見かけないし」
「今しか買えないって思うとつい買っちゃう」
「分かる。さっきの服もそう思って買ったんだ。
どっかのイケメンがデートに誘ってくれるといいんだけどね」
うっすらと湯気が見えるシナモン入りのコーヒーを少し飲み、まだ熱くて諦める。
マグカップを両手で包みながら、和美と目を合わせた。
世界が変わってしまうんじゃないかと思うくらい怖いけど、言いたかったことを声に出す。
「わたし、好きな人がいるんだ」