テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
記念すべき東西ドイツ再統一から早数年、ドイツは一通りの業務を済ませて、かつての片割れであるドイツ民主共和国の住処の片付けをしていた。東ベルリンにある家は、再統一の過程で失われつつあった東ドイツの面影をありありと残している。
「前日にリビングと寝室の掃除を済ませておいて正解かったな…」
何処へともなくドイツは呟いた。それもそのはず、彼の背には片付いたリビング、そして目の前にはこれでもかと物が詰まった押入れ部屋があった。
西側の冊子や帝政ドイツを思わせる骨董品、何故か積まれているソ連の雑誌スプートニク…大小様々な雑貨が詰まったこの部屋は、恐らく東ドイツが都合の悪いものを何でもかんでもしまい込んで「無かったことに」しようとした痕跡なのだろう。
しまい込むのは良いがもう少し積み方とか工夫できなかったのか、ともう居ない片割れに悪態をつきたいのを堪え、ドイツは部屋へと踏み入る。
「よし、手を動かさなければ何も変わらない、何も減らない!」
そう意気込み、部屋に積み上がった物の選別を始めた。
「…ん?これは…」
作業開始から2時間、ドイツは1枚の絵画を見つけた。
そこに描かれているのは、紺色の軍服に身を包んだ人物。硬い表情に、鋭い眼差し。背景に書かれているのは__黒鷲。
「……プロイセン王国」
思わずその名前を口にしていた。
かつてドイツをまとめ上げた存在として、名前だけは知っていた。面識はない。ドイツ連邦共和国が正式に樹立したときには既に居ない、歴史上の国。
戦後間もない時に教えられた。「プロイセンは危険な国だ」と。軍国主義の根源、ドイツを誤った道に進ませた元凶であると。
話だけ聞いた時も厳しい人だったのだろうかと思ったが、描かれているプロイセン王国の姿も、確かに「軍隊」という様な雰囲気だ。
折角だし、取っておこう__そう思って絵画を持ち上げ、「保存する物」の区画に退けようとした時、一枚の紙片が絵画の裏面から落ちた。
「…これは」
その紙に描かれていたのは、笑顔のプロイセン王国。絵画に描かれているのとは違い、顔を綻ばせ、普通の青年のように笑う姿。
絵画のものとは大違いだった。
走り描きの様な小さなスケッチが何故、裏面に…
片付けを忘れ、暫く絵画を眺めた。
そして、一抹の疑問を抱く。
「一体、貴方はどの様な人だったんだ?」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!