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「ザクセン、プロイセンはどの様な人だったか覚えているか?」


仕事の休憩時間、ドイツからの率直な質問にザクセンは一瞬驚いたように瞬きした。


「どうしたの、急に。貴方からその名前が出てくるとはね」

「東ドイツの家を片付けていたら、プロイセン王国を描いた絵画が出てきたんだ。その裏面に、この様な紙が挟まっていてな」


ドイツから受け取った紙片には、大口を開けて笑うプロイセン。


ああ、そう言えば彼はプロイセンを見たことが無いのね。


戦後の連合国による教育でしかプロイセンを知らない彼にとって、こうやって笑うプロイセンは不思議に見えたのかもしれない、とザクセンは頭の中で結論づけた。


(たしかにあの…お世辞にも中立とは言い難い環境では、プロイセンはどんな悪魔かと思っても仕方ないものね)


「俺はプロイセンについて軍国主義の体現者だと教わった。だが、この絵を見ていると、プロイセンには別の面もあったんじゃないかと思えてきたんだ」

「そこで、まずはザクセンの話を聞いてみたいと思った。何か憶えていることはあるか?」


プロイセンは北の隣人だった。忘れる訳がない。


「勿論。さて、何処から話そうかしら…」



プロイセンはずっと私の「油断ならない隣人」だった。…って、それはブランデンブルクの時も同じね。


貴方も分かっているだろうけど、プロイセンの土地は決して恵まれたものじゃなかった。沼地と荒野ばかり、資源も何もない。ザクセン東の辺境でさえ鉱山資源があったのにね。


率直に言っちゃえばやることが全く無いのよあそこは。だから、彼はブランデンブルクと一緒に戦の訓練ばかりしていたわ。

私のドレスデンが「エルベ川の真珠」と言われるほど文化を発展させている間、プロイセンは只管「国を大きくすること」を学び続けていた。


その軍事力増強の集大成、七年戦争は今でも覚えているわ。あいつ、宣戦布告なしにウチに攻め込んできたのよ!!んで重税を課してきて!?あぁ、もういい加減にしろ!!って怒鳴りつけたっけねぇ。

この後オーストリアとロシアに追い詰められてた時は「ざまぁみろ」って思っていたけど、何故か生き残っているし…あの時が一番ウザかったわ。


でも…ナポレオン戦争以降は随分と生き急いでいるように見えた。

近代化、産業革命、市民革命…私もあの時は自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、あいつはもっと大きな何かに追い詰められているみたいだった。


ナポレオン戦争の後に言っていたわ。「このままでは駄目だ」って。

不思議だったね。プロイセンは既に周辺諸国に認められ、オーストリアに並び立つ大国。これ以上何を求めているのか分からなかった。

どんどん新しい制度を作って、国力を蓄えて、工業化を進めて…


まさか、目指す先が神聖ローマ帝国でさえもなし得なかった完璧な「ドイツの統一」だったなんて。


私は殆どあいつのペースに飲まれていた。北ドイツ連邦、ドイツ関税同盟、全部プロイセンの言ったとおりに進んだわ。


そして1871年、あいつは近代に入って初めて「安心」の表情を見せた。

ドイツ帝国の成立。目的が達成されたのよ。

まぁその後、ドイツ帝国は変な方向に突っ走って崩壊しちゃったけどね。その後の彼は…あんまり、芳しくは無かったわね。


全く、「油断ならない隣人」が「油断ならない英雄」に大出世よ。


嫌いかって?それは…難しい質問ね。

簡単に好くことは出来ないけど、共感はできる。そんなところかしら?


彼はドイツの一員だったのよ。ちょっとだけ、情が湧いちゃったのかもしれないね。


そろそろ休み時間も終わるわ。私から話せるのはこれくらいかしらね…次は誰に話を聞くの?バイエルン?ハノーファー?

まぁ、彼等も私と似たようなこと言うと思うよ。

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