夜。
自分の部屋に戻り、制服をハンガーにかけたあと、咲はベッドに倒れ込んだ。
視線を天井に向けても、浮かぶのは悠真の姿ばかり。
――スーパーで隣に立って、棚の上から商品を取ってくれた手。
――重たい袋を軽々と持ってくれた横顔。
思い出すたびに胸がじんと熱くなる。
「……ダメだってば」
枕を抱きしめて、小さく呟く。
“兄の親友”で、“私のことは妹にしか見てない人”。
そう頭ではわかっているのに、鼓動は収まってくれなかった。
窓の外に揺れる街灯の光を見ながら、咲はまぶたを閉じても眠れそうになかった