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今日はエースの公開処刑の日だ。己の心臓がいっそうざわつくのが分かる。
俺たちは未だシャボンディ諸島にいて、外では映像電伝虫を通してマリージョアの様子がわかるらしいが、俺は見る勇気がなくてポーラータング号に引きこもっていた。
「――ディ……ジェ……ジェディ」
「! な、なんだ?」
いつの間にか思考が飛んでいたらしい。ローに声をかけられて我に帰る。目の前には、心配そうな顔で俺を見るローの姿があった。
大丈夫だ。と笑ってみせると、ローは納得していないような顔をして、それから溜息をつく。
「少し休んどけ。俺たちは少し外に出る」
ローはそれだけ言うと、俺の頭をひと撫でしてから部屋を出ていった。
ローが出ていった扉を少し見つめてから、俺は俯いた。大丈夫。大丈夫だから。自分の手を包むように握りしめながら何度も自分に言い聞かせる。
その時、コンコンッとノックする音が聞こえた。
誰だろうと思いながらドアを開けると、そこにはペンギンがいた
「ペンギン…?」
「出航だとよ、一応報せに来た」
「そっ、か。ありがと」
俺が礼を言うと、何故か苦笑された。首を傾げると、ぽんっと頭に手が乗せられる。そのままくしゃりと髪を撫でられた。
「あんまり俯くな。気分が沈む」
「……そうだな」
俺はぱしっと自分の両方の頬を叩き、操縦室の方へと歩き出した。
「ロー」
「ジェディ、今マリンフォードの方に向かっている」
「あぁ、どのくらいでつく?」
「もうつく……が、火拳の処刑に間に合うかはわからん」
「……」
間に合うも何も、エースは処刑によって死ぬのではない。サカズキさんの能力によって殺されるのだ。
「キャプテン!! 火拳が!!!」
別の部屋で映像電伝虫の映像を見ていたクルーが操縦室に飛び込んで叫ぶ。その瞬間俺は全身の血の気が引くのを感じた。
「赤犬に殺されました!!」
ドクン、と嫌な音を立てて心臓が脈打った。視界が歪む。呼吸が浅くなっていく。
エースが死んだ。ということは、ルフィが……ルフィが兄を目の前で喪ったのだ。まだルフィは少年なのに。自分の仲間と離れ離れになって日が浅いのに、兄まで喪って……。
「ロー! 早くルフィを、ルフィを助けにッ、もっとスピードを出してくれ!!!」
そう言う俺の肩を、ローが強く掴んだ。
「落ち着け…!」
「ッ……」
ローの鋭い視線に射抜かれて、俺はハッとした。焦っていても仕方がない。……そんなことわかってる。わかっていても苦しい。
それからまた、別の部屋にいたクルーが、今度は映像電伝虫を持って操縦室に飛び込んでくる。
映像電伝虫が映しているのは瀕死の白ひげ。
『――はねえが……あの宝を誰かが見つけた時、世界はひっくり返るのさ。誰かが見つけ出す。その日は必ず来る』
白ひげが息を吸い、再び口を開いた。
『〝ワンピース〟は…実在する!』
白ひげの言葉に、俺たちは息をのんだ。俺は白ひげがこのセリフを言うと知っていたのに、体が震えた気がした。そして白ひげは立ったまま死んでいった。
「……ッ! 手を止めるな! マリンフォードへ向かえ!」
ポーラータング号内の静寂を切り裂いたのはローだった。ローの指示に従ってポーラータング号はマリンフォードへと向かう。