テラーノベル
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「カナ、もう一人の女性は、この国の第二王子、弟のアリストと婚約した」
「え?」
喚ばれてすぐに、何で?
もしかして、待っている人がいなかったの?
私と違って……。
昨日の知らせから、急にそんな事になったなんて。もう一人の女性は、期待しても無駄なのかもしれない。この世界で生きていくつもりなのだろうか。
「王子様の婚約者だったら、もう怪しい人ではないのですよね? まだ会えないのですか?」
カトルはふるふると首を横に振ると、まっすぐにこちらを見て言った。
「兄弟と言っても、彼と私は母親が違う。それに彼は、この国では加護が薄い、たった一人だけの猫の獣人だ」
「獣人?」
「あぁ、両の耳が猫のもので尻尾もついている」
猫の耳と尻尾がついた人間ってこと?
名前がアリストって……。
まるでタツミが拾ってきた猫のアリスみたい。
私はまた、あのケンカを思い出してしまい謝らなきゃと思っていた――。
「私を蹴落とせば、この国の王になれる位置にいる人間が、魔力の強い彼女を引き入れたんだ。もし、転覆を企てるようなことがあれば、次はカナが狙われるかもしれない」
私は、この国の玩具じゃない……。謀略? 策略? 知らないよ、そんな事――。
私の世界に戻る方法は、自分で探すしかないか……。
ーーー
「カナ様、魔法がとてもはやく発動出来るようになりましたね」
ルードが魔法を見てくれる。
ここは、いつも使う魔法の練習場。お城から少し離れた場所にある。
「今日は、少し外を回りながら帰っても宜しいですか?」
「何かあるの?」
「はい、アリスト様がカナ様の結界の端がある場所で何かをしているそうなので、その調査に」
馬車が、いつもとは違う場所へと向かう。
「少しだけ、お待ち下さい。この一ヵ所が終わればあとは、城に戻ってからでも――」
そう言って、ルードは近くに池のある森へと入っていった。
私は外の空気が吸いたくて、馬車から降り池の縁に立った。
カサッ
何かが、風と共に動いた気がしたけれど、何も見当たらないので、私はゆっくりと池の水が風で揺れるのを眺めていた。
少し時間がたつと、ルードが戻ってきた。
「カナ様、終わりました」
「はい」
「森には魔物がいることもあります。あまり外に出られない方が――」
「結界をはっているのに?」
「すでに中に居たものは一緒に閉じ込められていますからね」
「そうなんだ」
ガタガタと馬車に揺られながら、私達は城に戻った。
ルードが言っているアリスト様って、第二王子よね?
そんなに、悪い人なのかしら――。
何か細工をするつもりなら、王子が直接動くなんて、おかしい気がするけど。
カトルは、怯えすぎているんじゃないかな。
それとも、平和ボケしている私にはわからない何かがあるのかな……。
「昼からは、もう一人の女性に――」
ルードは、そう言っていた。
私は昼からの魔法の練習から解放されたみたいだ。
「もう一人の女性は、魔力があるのよね……」
私と違って、ルードが教えたことをすぐに実践できるんだろうな。映画みたいにかっこよく炎の魔法とか、水の魔法とか使えるのかな。
それが羨ましくはないけれど、不安に思う事がある。
私と違って、この国に居続けるつもりなのだろうということ、第二王子様の婚約者であること、魔法が使えて、もしかしたら私は偽物で、もう一人の人が本物で――。
帰りたいと言っている私より、大事にされるかもしれない。だって、魔法の練習ももう始めるって――。
「どうしよう……」
私、ここから追い出されてしまうのかな。
もしそうなったら、どうやって知らない場所で生きていこう。
いやだ、死にたくない。帰りたい。タツミのところに――。
また、悲しみの感情が顔を覗かせる。
「オイデ」
誰?
「ココニカエル場所ガアルヨ」
何処?
「オイデ」
知らない声だけが響く。
「帰りたい。帰りたい!」
私は大きな声で叫んでしまった。
暗い声がケタケタと笑い声をあげる。
「カナシミトゼツボウヲノセル夢ノ牢獄ヘ」
「カナ様、いかがなさいました!?」
コンコンと扉を叩く音と女の人の声がする。
私は、違う、そんな場所じゃない! もとの世界に……。
「カナ――」
「ライト……」
急な眠気に襲われて、私はたぶん、倒れたんだと思う。
ーーー
真っ暗……。
「カナ」
「タツミ?!」
タツミの声だ! どこ? どこにいるの?!
「カナ」
ぼぅっとした光の中にタツミの姿が浮かぶ。
「タツミ!」
その横には、知らない女の人がしなだれかかっている。
「その女の人、誰――?」
「カナが、言っていたじゃないか。その人と付き合えばって――」
「それは!」
「カナよりずっと素直で、気が楽だ」
やめて。
「喧嘩なんてしないしな」
やめて!!
「カナが居なくなってよか――」
やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!
私は見たくないからと、目と耳をぎゅっと押さえた。
そして、叫んだ。
「本気じゃなかった、本気でそんなこと言ってない! いやだ、いやだよ」
暗闇の中、私は後悔し続ける。
言ってはいけない言葉を、口にしてしまったんだ……。
ーーー
「カナ、カナ!」
ライト――――?
遠くで、呼ばれている気がするけれど私は目の前の二人を見ることが怖くて、目をふさぎ続けた。
ーーー
どれくらいの時間がたったのかな……。
遠くで誰かの声がする。誰かが私を撫でる。
誰? でも、この手は――。
タツミの手じゃないということが悲しかった。
#dzl社
ライラ🔮🌸🌙
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しめさば
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#異世界ファンタジー
コメント
1件
今回はカナの心の闇がどんどん深くなってて、読んでて苦しかったな…。特に夢のシーンのタツミの言葉、あの喧嘩の後悔がここまで尾を引くってのがリアルで胸が痛くなったよ。池のほとりで聞こえた「オイデ」っていう不気味な声も、何かの伏線っぽくて気になる。カナが追い詰められてるのがひしひし伝わってきたわ。れんさん、今回も心理描写が秀逸だね!