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大学祭の喧騒が残る校舎内、ナース姿のみことは真っ赤な顔でそわそわと歩いていた。
丈の短いナース服に、純白のストッキング。
露出は少ないはずなのに、むしろ脚線美が強調される格好で、すれ違う学生たちの視線が突き刺さる。
「……え、えろくね……?」
「足やば……あの顔であれは反則だろ……」
そんな声が後ろから漏れ聞こえるたび、みことの肩が小さく震える。
その横にいたすちは、無言で一歩前に出て、すっと自身の白衣を脱ぎ、みことの肩にかけた。
「露出、多すぎる」
「えっ……あ、ありがとう……」
白衣に包まれたことで、ほんの少し安堵したみことが、小さな笑みを浮かべたのを見て、すちはふっと笑った。
「何か食べたい?」
「……わたがし」
小さな声で答えるみことに、すちは「了解」と即答し、慣れた足取りで屋台の列に並んだ。
わたがし、飲み物を手に、2人はたまたま見つけた空き教室に入る。
人気はなく、静かな時間が流れる。
椅子を並べて腰掛け、少し肌寒い空気の中で、みことがふわふわのわたがしを手にする。
「……わ、なにこれ。ふわっふわ。……初めて」
そう呟いたみことの目が、わたがしと同じくらい、きらきらと輝いていた。
「おいしい……甘い……」
目を細め、頬を緩め、心から嬉しそうなその表情に、すちは胸を打たれた。
(……今後ももっと可愛くなるんだろうな)
「俺にも、ちょーだい」
「え……? い、いいよ……」
みことが言いかけたその瞬間だった。
すちの手が頬に添えられ、みことの顔が引き寄せられる。
「ん……っ!?」
唇が、重なった。
驚きで目を見開くみことに、すちは優しく、けれど確かな熱を持って舌を差し入れる。
甘い、わたがしの味。
みことの中に残るその香りごと、ゆっくり、絡め取るようにキスを深めた。
「んっ、ぅ……ふ……」
静かな教室に、湿った吐息とキスの音だけが響く。
やがて、そっと唇が離れた。
「……甘くて、美味しかった」
すちはそう言って、微笑んだ。
みことは、顔を真っ赤にして俯いたまま。
触れた唇の温度に、心臓が高鳴った。
空き教室の窓から差し込む夕暮れの光が、柔らかく二人を照らしていた。
机の上には飲み終えたコップとわたがしの袋だけが残り、
しんとした空気の中で、みことはまだ胸元を押さえていた。
ふわふわの甘さが、まだ唇の裏に残ってる。
でも――それ以上に、もっと深い熱が。
「……すち」
「ん?」
すちは、いつもと変わらぬ穏やかな声で振り向いた。
みことは少し頬を赤くしながら、目をそらして言った。
「さっきの……キス……いきなりは、ずるいよ……」
「……ごめん」
「……でも」
ぽつりと続ける声は、震えていた。
「……もっと……したい……から……今度は……ちゃんと……ぎゅって……して……」
言い終えると、みことはきゅっとすちの裾を握った。
目元は赤く、口元はすこし膨れて、拗ねたような、でもどこか甘えるような表情。
すちは黙って微笑み、優しく「もちろん」と頷いた。
次の瞬間、彼の腕がするりとみことの腰にまわされる。
「おいで」
そのひと言で、みことはすちの膝に、そっと跨るように座った。
白衣に隠されていた脚が、ほんのり震えている。
向かい合うかたちで見つめあい、ふたりの距離はゆっくりと縮まる。
まるで確かめるように――
「……ん……っ」
唇と唇が、重なった。
さっきよりも長く、深く。
今度はすちの両手がしっかりとみことの背中を支え、優しく包み込む。
みことも、腕をすちの首に回し、きゅっとしがみついた。
舌先が触れ、絡み、ぬるりと唾液が混ざり合っていく。
「っ……ん、ぁ……すち……」
初めての感覚に、みことの身体からすうっと力が抜ける。
甘くて、柔らかくて、でも熱くて――
それでも怖くないのは、すちの腕の中にいるから。
すちはしっかりとみことを支えたまま、何度も角度を変えて唇を重ねた。
教室の中には、静かな吐息とキスの音だけが、こっそりと溶けていく。
やがて唇がそっと離れ、ふたりの額が触れるくらいの距離で、みことがかすかに呟いた。
「……すち、あったかい……」
「……みことも、甘い」
すちは小さく笑い、額をそっと合わせた。
抱きしめる腕にこめた想いが、何より雄弁だった。
みことはゆっくりと目を閉じ、しばらくそのまま、すちの体温に包まれていた。
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