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ー床の扉ー ②
……寝室を開ける。トイレも、タンスも、お風呂場も、すべて調べてみる。
(どこだ………?)
僕は今、山奥の祖母の家にいる。
そして、床に不自然についている扉を発見し、今は鍵を探し回っているところだ。
(見当たらないなぁ、…………外かな、埋まってたりして)
外に出てみる。
裏庭にまわる。
丁度立て掛けてあった、小さなスコップで、あてずっぽうに穴を掘っては、埋めていった…。
十五分程掘り、諦めようとしたその時………
……カッチャン。
何かが背後で鳴った。
振り向いてみると…………
「これだぁ~!」
探していた鍵穴にハマりそうな、小柄な鍵が落ちていた。
持ち上げられたドアのその先には、暗闇に向けてひたすら梯子が延びていた。
足をその闇に入れようとした瞬間…………
「明来~!戻って来なさ~い!」
母親の声がした。
慌ててドアを閉め、着ていた上着をそのドアにさっと被せ、馴染ませた。
鍵は、ポケットに忍び込ませた。
「今年は…えっと…………」
眉間にシワを寄せた母と、興味が顔ににじみ出ている父と祖母に囲まれて、僕は縮こまっていた。
「……おばあちゃん家に着くまでにまとめといてねって言ったの、覚えてるかしら…?」
エアコンが唯一効いている部屋の癖に、汗が流れてきたのを、肌で感じた。
「覚、覚えてました。け、けど、まとめてるうちに、忘れてしまって…ちょっと思い出させて!」
冷静を装いながら、足早にトイレに向かった。
個室の鍵を閉めて、籠った。
シャワシャワシャワシャワ………
途切れることなく鳴き続ける蝉の声が、僕を現実に引き戻した。冷静になっていく。
(まとめるなんて…すっかり忘れてた………、どうしよう、言わなきゃならないのに…)
『ピチャン』
「………?」
よく目を凝らして、音の根源を探す。
……しかし、個室には音の正体は見当たらなかった。
「あ、早くしないと…!」
やけくそになってトイレを飛び出し、茶の間に向かおうとした時、ふとあのドアが目にはいった。
(えっ)
息を飲んだ。
…ドアが、不思議と開いていた。
(だ、誰かにばれたか…?おばあちゃん…とか…)
とにかく茶の間に戻らなければ。
僕は、まだまとまっていない一年間を、無理矢理話した。
第3話へ続く