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第九章 嫉妬
〝阿部〟
と書かれた部屋の前。
出勤の準備を終え、ナース服を両手に抱えて立ち竦む。
気が重い……。
握り拳を力なく打ち付ける。
弱々しいコツコツという音が、廊下に響いた。
ゆっくりと開いた扉。
慌てて左右を確認する。
亮平💚「どうぞ」
あんなに優しかった先生。
今は怖かった。
シュンと下を向いて、部屋の隅に立つ。
亮平💚「噂はほんとなの?」
翔太💙「どんなうわさ?」
亮平💚「蓮と寝たって……みんな言ってる」
翔太💙「そんなっ違う……もうやだこんな所居たくない」
亮平💚「違うんだね?」
胸がぎゅっと苦しくなって、涙が溢れた。
涙が頬を伝う。
翔太は袖で慌てて拭いた。
翔太💙「どうせ誰も信じてくれないんだ……」
声が震える。
翔太💙「昨日だって……」
少し息を吸う。
翔太💙「気づいたら目黒先生の部屋で……」
先生は何も言わずに聞いていた。
翔太💙「僕だってわけ分からないんです」
俯いたまま言う。
翔太💙「初日から変なことばっかりで……」
沈黙。
しばらくして
先生が小さく息を吐いた。
亮平💚「……ごめん」
翔太💙「え?」
亮平💚「疑ったわけじゃない」
少し困ったように笑う。
亮平💚「ただ」
間。
亮平💚「気になった」
翔太💙「……」
先生は一歩近づいた。
亮平💚「翔太」
翔太💙「はい」
亮平💚「あいつは」
少し考える。
亮平💚「悪い男だよ」
翔太💙「えぇ」
亮平💚「でも」
少し笑う。
亮平💚「俺も人のこと言えないか」
翔太💙「?」
先生が手を伸ばす。
頭に軽く触れる。
亮平💚「泣くな」
翔太💙「……」
亮平💚「噂なんて気にするな」
翔太💙「でも……」
亮平💚「俺は信じる」
翔太は顔を上げた。
亮平💚「それで十分だろ?」
胸が少し軽くなった。
頭を撫でた手が、俺の目の前に差し出された。
亮平💚「貸してごらん手伝ってあげる」
翔太💙「えっ……あの、ひとりでできます」
亮平💚「上手くできないって言ったのは君だろ?」
後ろに下がると壁にぶつかった。
腰を引いて身構える。
亮平💚「ほら早く……それとも脱ぐのも手伝おうか?」
なんでこうなるの……。
翔太💙「後ろ向いてて」
少し笑いながら
先生はゆっくりと背中を向けた。
翔太は慌ててナース服を広げる。
手が震える。
ボタンを外す。
シャツを脱ぐ。
背中に
視線を感じた。
翔太💙「見ないでくださいよ!」
亮平💚「見てない」
翔太💙「絶対見てる」
亮平💚「見てないよ」
くすっと笑う声。
翔太は慌ててナース服を着た。
翔太💙「……できました」
先生が振り向く。
一瞬。
沈黙。
亮平💚「似合う」
翔太💙「……」
亮平💚「ほんと」
少し笑う。
亮平💚「危ないな」
翔太💙「え?」
亮平💚「あんなミニスカートで」
翔太💙「理事長ルールなんです!」
亮平💚「知ってる」
少し近づく。
翔太は一歩下がった。
壁。
逃げ場がない。
椅子に促され座ると、先生は床に跪いた。
ストッキングを手にしている。
亮平💚「足……出して」
恥ずかしさと、緊張でどうにかなりそうだった。
ドキドキと心臓がうるさい。
きっと恥ずかしいからだ。
それ以外の理由なんて絶対ない。
亮平💚「頰が赤い」
翔太💙「こっ……この部屋なんか暑いっすね」
季節は四月。
今朝は朝から寒かった。
クスッと鼻で笑われた。
亮平💚「綺麗な足だね……触りたくなる」
そう言って、つーっと人差し指で撫でると、
指が上昇してくる。
翔太💙「せっせんせい?」
頰に触れた長い指。
唇がおでこに押し合てられた。
思わず鎖骨に手を置いた。
亮平💚「?……あぁ独占欲強めの黒豹の仕業だな」
そう言った先生は、ガシッと両肩を掴むと
鋭い目付きで俺を見た。
すごく……怖かった。
亮平💚「翔太」
低い声。
次の瞬間。
荒々しく唇を奪われた。
息ができなくって、胸を押し返すも、びくともしない。
翔太💙「はっ……はぁっ」
亮平💚「覚えておきなさい」
亮平💚「この病院」
静かな声。
亮平💚「狼だらけだから」
亮平💚「……気をつけろ」
亮平💚「次は」
少し笑う。
亮平💚「俺じゃ済まないかもしれない」
沈黙。
俺は息を整えながら
ドアに手をかけた。
翔太💙「しっ失礼します」
扉を開ける。
廊下。
――目が合った。
蓮 🖤「……」
黒い瞳。
目黒先生だった。
翔太💙「……」
時間が止まる。
先生の視線が
ゆっくり
翔太の唇に落ちた。
そして
先生を見る。
蓮 🖤「へえ」
小さく笑う。
蓮 🖤「朝から仲がいいな」
背中から
阿部先生の声。
亮平💚「蓮」
空気が
一瞬で張り詰めた。
紫寮の廊下は
静かだった。
静かな廊下。
誰もいない。
……はずなのに。
微かに残る
コーヒーの匂い。
翔太💙「……」
この匂い――
思い当たるのは一人しかいない。
――――――
大きな窓。
コーヒーの香り。
モニターが並ぶ壁。
廊下の映像。
そこに映る
黒豹と狼と雪うさぎ。
辰哉💜「……」
コーヒーを一口。
辰哉💜「なるほどねぇ」
くすっと笑う。
辰哉💜「恋の巨塔だねぇ」
コメント
4件
わかった!🤣🤣💜は毎回毎回オチ要員なのね!?🤣🤣🤣🤣 💚ちゃんかっこよー!ミニスカの上に、ストッキングまではかされてるんすか🤣🤣🤣🤣
