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こうして感動する日が始まるのだろうか😭✨
とても面白かった😂これから涼ちゃんとの先のお話が楽しみ!
あらまぁ〜。新作品でたの?あたちうれちぃわぁ〜
episode1 ある日の深夜ライブ
俺は今日も小さなライブハウスでバンドをしている。
勿論俺らだけがここを貸し切っている訳では無いので、無名ながらもある程度の人気を誇っているバンドも居たからそこそこの人はいた。
だが、俺らのバンドは人気も知名度もなかったため、俺らの演奏が始まるとある人はスマホを触り出し、ある人は大声で近くの人と話す。
俺らの演奏なんぞ誰も興味がなかった。
そのライブハウスでは俺らがダントツで人気がなかったため、いつもあと片付けを任されていた。
客がポイ捨てしていったお菓子のゴミを拾いながら空っぽのステージを見つめる。
音楽が好きでバンドを始めたはずなのに、いつしかその気持ちが薄れてきていることを感じていた。
「この生活、いつまで続くんだろうね。」
バンドのメンバーであるギターの若井がぽそりと呟いた。
その言葉に
「もう、どこまで続ければいいのかな。」
そう返した。
次の日の深夜も機械のように無になりながらギターを持ち、ステージに立っていた。
俺らがどれだけ懸命に演奏しても、どれだけ本気で叫んでも、聞いてくれる人がいないなら演奏している意味が無い。
そう思ってしまった。
前は好きで、別に俺が楽しければそれで良かったのに、いつしか誰も見てくれないことに飽き飽きしていたのだ。
気づけば、ただ演奏することが苦痛になっていた。
今日も意欲のないままギターを弾きながら歌っていた。
ふと観客の中で手を挙げてノリに乗っている人が目に入った。
その人は、まるで俺たちの音楽を心から楽しんでいるような表情に見えた。
目が会った瞬間、心が震えた。
そこから続く2曲はその人のために音楽を鳴らした。
その瞬間から、俺の中にある何かが変わり始めたのだ。
ライブ終了後、先程の人が話しかけてきてくれた。
「あの…!すごく良かったです、!」
その言葉は、俺にとってのどんな評価よりも大きかった。
心が暖かくなり、気持ちが込み上げてきた。
「あっ..の、!ありがとう..ございます! 」
褒められ、嬉しくてついつい声に彩りが備わる。
「バンドのお名前はなんて言うんですか?」
その人に聞かれて
「Mrs. GREEN APPLEです!」
自信満々に答えた。
「いやぁ…いつもは駅前の方のライブハウスに行くんですけど、今日たまたまこっち側に用事があって!歩いている時に聞こえた音漏れしている音楽がとてつもなく素敵で吸い寄せられちゃいました!」
冒険ってしてみるものですね〜と笑いながら喋る金髪のお兄さん。
「あのっ…!お名前は…?」
「僕…ですか?」
ビックリした様子で聞き返すお兄さんにこくっと頷く。
「名乗る程の者ではないですが…笑 …藤澤涼架と申します。 」
年齢は20歳ぐらいだろうか、でも普通の年上より威圧感がなく、年上が嫌いな俺でも積極的に話すぐらいほわほわしていた。
「あの、!俺大森元貴っていいます、!こっちのギター上手い方が若井滉斗で! 」
自己紹介をしていると
「なんか久しぶりに元貴から褒められた気がするんだけど!」
と、ギターを片付けていた手を止めこちらに駆け寄ってくる。
「なにそれ、幻聴じゃね?」
小っ恥ずかしくて誑かすと、
「いや!絶対に褒めてた!!」
一歩も引かない若井。
「泥団子みたいな奴が若井滉斗ですよ〜って自己紹介してただけ。」
「もう俺坊主じゃねぇわ!!」
わちゃわちゃと言い合いをしていると藤澤さんがくすっと笑った。
「なんか..仲良くていいね!笑」
僕もそんな青春したかった〜と嘆いている。
「というか、ここら辺になんの用事だったんですか?」
ここら辺は駅から少し外れた住宅街。
藤澤さんはスーツを来ていたので訪問販売でもしていたのかな?と少し疑問に思ったので聞いてみた。
「あ…忘れてた!」
君たちの演奏に気を取られて本来の用事まだ済ませてない!と慌てて言う藤澤さんにドジだなぁという目線を向ける。
「じゃ!僕は失礼するね!」
上司の家行かなきゃだから〜という藤澤さんに
「あの、!」
そう声をかける。
ん?という顔をして振り返る藤澤さんに
「また俺たちの演奏聞きに来てください!本当に聞いてくれて嬉しかったんです!社会人お忙しいだろうけど…、どうですか!」
そう言った。
俺の本気な姿に
「うん、僕もこれから君たちの曲沢山聞きたい。毎日来るね。」
クスッと笑いながらまたね〜!と手をブンブン振る姿に俺は深くお辞儀をした。
「なんか、不思議な人。」
ボソッとつぶやく若井。
「でも、ちゃんと俺らの演奏聞いてくれた良い人だよ。」
「まぁ、それもそうだな。」
よっしゃ!明日も頑張るか〜!と若井は気合いを入れ直す。
俺も最近止まっていた作曲のアイディアが降りてきてなんだかバンドの意欲が高まった気がした。
これが藤澤さんと俺が関わった初めの出来事だった。