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朝から、学校中がいつもと違うざわめきに包まれていた。
廊下には装飾の紙が貼られ、教室からは笑い声や音楽が漏れてくる。
──今日は、文化祭。
(別に……特別な日ってわけじゃない)
そう思おうとしても、心臓はなぜかいつもより少し速く脈打っていた。
葵:「おーい、凛〜!」
聞き慣れた声が校門のほうから響いて、私は思わず振り返った。
人混みの向こうから、神崎葵が手を振って走ってくる。
その姿を見ただけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
(……あの人混みの中で、よく私を見つけたわね)
葵:「やっぱり来てた! ねぇ、今日は一緒に回らない?」
凛:「……別に、いいけど」
私の返事に、葵はぱっと顔を明るくした。
その笑顔に、また少し胸が高鳴る。
まずは私のクラスの展示を見ることになった。
教室の中はほどよい賑わいで、説明係の声と見学者の話し声が入り混じっている。
葵:「すご〜い、ちゃんと作ってるじゃん!」
凛:「当たり前でしょ。……ほら、ここの資料、見てみる?」
私はパンフレットを差し出した。いつもより少しだけ丁寧な声になっていた気がする。
葵は受け取って、興味津々といった様子で資料を覗き込んでいた。
葵:「へぇ〜、凛の班がここやったの? なんか凛っぽい〜」
凛:「どういう意味よ」
葵:「まじめで、きっちりしてるってこと〜。褒めてるんだからね?」
凛:「……はいはい」
気づけば、私はいつもより饒舌になっていた。
葵が横にいるだけで、少し気が緩む。……というより、楽しい。
昼過ぎ、校庭の屋台通りへと足を運んだ。
甘い匂いや揚げ物の匂いが混ざって、空気が賑やかに弾んでいる。
葵:「なに食べよっか〜! あっ、焼きそば! いや、クレープもある!」
凛:「落ち着きなさい」
葵:「だって、お祭りっぽいのってテンション上がるじゃん!」
葵はきらきらした目であちこちを見渡している。その様子を見て、私は小さく笑ってしまった。
凛:「……そんなに嬉しそうにするなんて、子どもみたい」
葵:「え、なにそれ〜! 凛だって楽しそうだよ?」
凛:「そ、そんなこと……」
(……ある、のかな)
自分では意識していなかったけれど、たしかに心は軽かった。
まるで、この人と一緒にいる時間だけが、日常から少し離れた「特別」みたいで──。
人混みの中を進んでいると、ふいに葵の姿が見えなくなった。
凛:「……あれ?」
前方を見回しても、後ろを振り向いても、葵の顔が見えない。
(……まずい、人多いし……!)
焦ったそのとき──
凛:「……葵!」
人波の向こうで、彼女が振り返った。
その瞬間、私はほとんど反射的に腕を伸ばしていた。
葵の手を、ぎゅっと掴む。
葵:「わっ……凛!?」
凛:「……はぐれるでしょ、ちゃんとついてきて」
自分でも驚くほど、強い声が出た。
その手は思ったより温かくて、柔らかかった。
途端に、心臓がドクンと跳ねる。
(な、なにやってるの私……!)
でも、離せなかった。
人混みの中で、葵と繋がった手だけが、確かなもののように感じたから。
葵:「……ありがと」
葵が小さな声で呟いた。
その顔は、少し赤いように見えた。
(……やめて、そんな顔されたら……こっちまで……)
私は目を逸らし、手を放そうとした──でも、葵はその手を握り返してきた。
葵:「はぐれたら困るし、ね」
軽く笑う声。でも、その瞳はまっすぐだった。
手のひらが、じんわりと熱い。
祭りのざわめきの中、私たちの間だけが、まるで時間がゆっくり流れているようだった。
長くなってしまいました、、 ごめんなさい!ほんとにここまで読んでくれてありがとうございます。
学校始まったんで、投稿遅くなるかもですが見てくれますよね!?!?
またね~!♡、コメント、フォロー、よろしくお願いします。