二人が会話を交わしている間、青子は廊下をゆっくりと歩いている、快斗と瓜二つの顔をした青年に釘付けになっていた。恐らく校内見学をしているのだろう。
華奢だがスタイルの良い体に、癖のないストレートな黒色の髪、遠くからでも分かる綺麗で惹きこまれるような青色の瞳。この距離だと快斗と瓜二つと言っていいほどに似ていたが、解き放っているオーラ、雰囲気が正反対と言っていいほどに違う。
快斗は太陽のように明るく、ムードメーカーな一方で、新一は月のようにどこか陰を持っているように感じるが、照らされている部分は引き込まれるかのような美しさを持っている。
「あの人、工藤新一くんだよね?綺麗な人…」
快斗も廊下に注目すると、”工藤新一”が先生に笑いかけている姿が見える。
(げ、噂はホントだったのかよ…それにしても、名探偵はなんでわざわざ江古田にきたんだ?)
新一は帝丹高校に在籍していたはずだ。彼ほどの頭脳さえあれば何らかの措置さえあれば進級できただろう。その措置さえなかったというのだろうか。
(まあ江古田は私立の帝丹と比べてそこら辺緩いしなぁ)
まさか自分の正体がバレたなんてことはないだろう。新一は”黒羽快斗”を認知すらしていないだろうから。
⸺と思いたかったが、新一も快斗と同じく、不可能を可能にする人種である。知られた可能性も大いにある。
新一の方に再び目をやると、視線に気づいたのか向こうもこちらへと振り向いた。その瞬間、新一の瞳が快斗に捕らわれ、また快斗の瞳も新一に捕らわれた。
快斗は、コナンにこそ何度も仕事の邪魔をされてきていたし、新一本人に素顔で変装をしたこともあったが、”工藤新一”の姿をまじまじと見たことはなかった。
いくら顔が似ているとは言っても、自分とはまた違う、どこか儚く、色めいた印象を受けた。
そんな姿に触発された快斗は、上等じゃねえか名探偵と僅かに口角を上げた。
新一の方もまた、視線がぶつかりあった、ほんの一瞬で怪盗キッドと対決をするときのような、背中がゾクゾクする感覚を覚えた。その気配は直ぐに消えたが、気のせいなはずはない。
この高校にいる怪盗キッドの正体は、新一の視線の先の彼であることは明白だった。
「…いと?かい…快斗?」
「あ、ああ、なんだよ青子」
「どうしたの?さっきからぼーとしちゃって」
「いや、なんでもねえ」
快斗は歯切れ悪く答え、再び廊下へと視線をやったが、そこは既にもぬけの殻と化していた。
「いなくなっちゃったね。お話したかったのになぁ」
「有名人の工藤新一サマがオメーの相手をしてくれるはずがねーだろ?」
「やっぱりそう?」
項垂れている青子と共に帰路についた快斗は、傍らで青子の相手をしながら静かに名探偵から正体を隠し通す方法を模索していた。
続く
(R15↑くらいのシーンを書こうにもかけなくて困り中です…助けて…)
コメント
3件
確かに新一なら出席日数の関係で留年することになっても何らかの方法で進級出来ると思うけど、転校してきたってことは他の事情があるのかな……?それともただ単に普通に転校しただけ、かな……?どーなんだろ……🤔🤔 知り合いだけど知り合いじゃない、みたいな少し複雑な関係が最高!!!快斗の正体がバレて欲しいような気持ちとバレないで欲しいような気持ちが葛藤してる🤭💭