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俺が退勤し外に出ると、聞き覚えのある声がした。
「すみません」
声のする方を見ると、奏人の彼氏が立っていた。
「どうも。奏人の彼氏さん。奏人の彼氏なんかが俺になにか話でも?」
「奏人くんのことが大好きな優樹くんは、その奏人くんの彼氏の僕の話なんて長く聞きたくないと思うから単刀直入に言うね」
なんだよ。癪に障る言い方だな。俺はイラッとしながらも聞く。
「なんです?」
「君、ドルでしょ?」
バレた。なんでだ。この人の前でドルの力を使ったことなんてないのに。
「…なんの話ですか?大体ドルってなんなんです?アメリカの通貨ですか?俺持ってないですけど」
「とぼけないでくださいよ〜。僕がドルの力で″奏人くんにあんまり近づかないで″って言ったのに、むしろ今まで以上に近づいてるでしょ?」
しくった。こいつのこと嫉妬させるのに夢中になっててすっかり忘れてた。でも、ドルってバレるのは少し面倒だ。なんとか誤魔化さないと。
「たしかに、俺は奏人と仲良くしてますよ。でも俺はドルじゃないし、ドルなんて知らないです」
「おかしいですね。ドルの力を打ち消せるのはドルだけなのに。どうやったかは知らないですけど、自分にドルの力を使えば、どんな命令をドルにされても打ち消せるでしょ?」
あぁ、めんどくさい。わかったよ。俺の負けだ。
「あぁ。そうだよ。俺はドルだよ」
「やっぱり。それで?僕がドルってわかったから独占欲が強いのを利用して、奏人くんに僕のこと嫌いにさせようとしてたのかな?」
キッパリいい当てられてしまった。なんか悔しい。
「そうだよ。実際嫉妬してたみたいだし。キスマなんてつけてさ。奏人も嫌がると思ったのに喜んでたし」
「え?喜んでたの?可愛いな、奏人くん」
そう言って彼は嬉しそうに笑っている。あぁ。本当に腹が立つ。
「よかったですね。幸せそうで」
「幸せだよ。だから、もう僕たちの邪魔しないでよ。君が何をしても、僕は奏人を離さないし、奏人も僕のことずっと大好きだと思うよ」
そんなのわかってる。奏人とこの人がお互いのことが大好きで、俺が奏人に好きになってもらうなんて無理だって、わかってるんだ。
でも俺は、奏人のことが好きだ。高校の時からずっと。だから、昔みたいにまた奏人を独り占めするんだ。もう離さないから。俺の元に帰ってきたら、もう、誰にも渡さない。
「そんなの知らない。奏人は俺のだ。絶対俺のものにする」
「どうやって?ドルの力を使って?」
「そうだよ。俺はどんな手でも使う」
「へぇ〜。可哀想。ドルの力使わないと、奏人くんに見向きもされないなんて。僕はそんなのが無くても、奏人くんは僕といてくれるよ?」
なんなんだこいつ。奏人の前ではあんなにいい人ぶってる癖に。こんな性格悪い奴だったのか。やっぱりドルはみんな同じだな。
「なんだよ。そっちだってドルの力使って奏人のこと好きにさせたくせに」
「なんの話?」
「奏人から聞いたよ。″僕のこと好きになってくれたら嬉しい″って言った後、寝たんだって?ドル後から使ったんだろ?」
「あ〜、あの時ね。誤解だよ。その前にドルの力使ったからさ。後から来たみたいで」
「ホントかよ。ドルの言うことなんて信用出来ないね」
「ほんとだよ。その証拠に、眠ったのはたったの10分だよ?奏人くんも知ってるはず。それがどういう意味か、ドルならわかるでしょ?」
眠ったのはたった10分。それなら、そんなに強い力は使ってないということだ。ドルの力で人の人生を大きく変えるようなことを命令したら、1周間、いや、人によっては1ヶ月でも眠ってしまうと言われている。実際俺も、奏人に俺のことを忘れさせた時、1週間ほど眠ってしまった。
自分のことを忘れさせただけでこんなに代償が大きいのなら、自分を好きにさせる命令なんて、もっと大きな代償が必要になるだろう。多分、1ヶ月ほど眠ってしまうと思う。
つまり、奏人は本気でこの人の事が好きなのだ。なんだかすごく悔しい。
「…よくわかりましたよ。奏人はほんとにあなたのことが大好きなんですね」
「うん。奏人くんは僕のことが大好きだよ。だから、もう諦めなよ。これ以上奏人くんに…あっ、奏人くんだ」
そう言って彼は俺の後ろの方を見ている。俺が振り向くと、奏人はこっちに歩いてきていた。そこへ彼は駆けていき、奏人の肩に腕を回した。
「奏人くん、行こっか」
そう言って歩きだす彼と一緒に奏人も歩いていく。
一瞬だけこちらを見てくれたけど、また、彼の方を見て何か言っている。
ムカつく。俺の奏人なのに。なんで俺はあの時、奏人を手放してしまったのだろう。あの時手放さなければ、今もずっと奏人と一緒に居れたのに。あぁ、もういい。壊してやる。あの二人の関係を。絶対に。絶対に。
「壊してやる」