テラーノベル
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第5話
「ねえ若井くん、今度さ、駅前に新しくできたカフェにパフェ食べに行かない?すごく美味しそうなの!」
学校の保健室で、涼架がいつものタレ目をさらにふにゃりと下げて誘ってくれたとき、胸が跳ね上がるほどとしかった。
学校の外で会う、初めての約束。実質的な初デートなんじゃないかと、内心ずっと浮足立っていた。
そして、待ちに待った約束の日。
俺は約束の時間の15分前には、お洒落なジャズが流れるカフェの席についていた。普段は適当に着る私服も、クローゼットの前で何度も悩んで選んだものだ。
お店のメニューや店内の雰囲気。
それを見るだけで、自然と口元が緩んだ。
(涼架のやつ、また「楽しみすぎて眠れなかったー」とか言って、ふわふわしながら来るんだろうな)
そんな微笑ましい姿を想像しながら、俺は店の入り口を何度もチラチラと盗み見ていた。
しかし。
約束の時間を10分過ぎ、20 分が経過しても、店内に涼架の姿は現れなかった。
「遅いな。迷子にでもなったか?」
スマホを取り出し、メッセージを送ってみる。
『今どこ?店着いてるぞ』
既読はつかない。
さらに30分が経ち、さすがにおかしいと胸騒ぎがし始めた。あの真面目で優しい涼架が、連絡もなしに遅刻するなんてあり得ない。
俺は通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。
規則的な電子音が、静かな店内に虚しく響く。
『…呼び出し音ののち、お近くの一ー』
機械的なアナウンスが流れた瞬間、指先が冷たくなる。もう一度、二回、三回。何度かけても、涼架が電話に出ることはなかった。
頭をよぎるのは、あの日の移動教室の階段での出来事だ。
壁に背を預け、胸を掻きむしるようにして激しく呼吸を乱していた、涼架の苦痛に満ちた表情。
(まさか、また倒れたんじゃ…つ)
最悪な想像が頭を支配し、心臓が嫌な音を立てて暴れだす。
店の外はいつの間にか、すっかり夜の帳が下りていた。窓ガラスに映る自分の顔は、いつにも増して吊り目が鋭く尖り、焦燥感で幽霊のように青白い。
「…あの、お客様?」
突然、上から声をかけられてハッと我に返った。
見上げると、申し訳なさそうな顔をした店員が、ドレイを胸に抱えて立っていた。
「そろそろ、当店の閉店時間なのですが…..」
「え…..っ」
時計を見ると、針はもう夜の閉店時刻を回っていた。あれから何時間も、俺は一人で待ち続けていたのだ。
テーブルの上の水は、すっかり温くなっている。
「….あ、すいません。すぐ出ます」
財布から代金を取り出し、伝票と一緒に机に置く。
結局、楽しみにしていたパフェを注文することは一度もなかった。
店を出ると、夜の冷たい風が頬を打った。
明るい街灯の下、スマホの画面を見つめるが、涼架からの通知は一件も届いていない。
「涼架…どこにいるんだよ…」
ぽつりと呟いた声は、夜の雑踏にかき消された。
激しい不安と、何もできない無力感が、俺の胸を容赦なく締め付けていた。
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じゃむじゃむあっぽー🍏
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コメント
1件
涼架くんが心配です。若井くんの気持ちが痛いほど分かります。