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「あいつの声、聞こえなくなったな」
「ん? そういえば麦わらの奴、どこ行っちゃったんだろうな。今度傷が開いたら死ん……危ないんだろ?」
釣りをするシャチの隣でペンギンが言う。
あぁ、だめだ……心臓がざわつくなんてものじゃない。気が気じゃない。自分自身の手をギュッと握り、不安をかき消すように頭を振る。
ぱちゃ――と水面が揺れ、シャチの釣り竿に魚が引っ掛かった。
「はは、釣れた釣れた」
そうシャチが笑いながら、竿を引いたとき、風のようなものを感じた。
ペンギンが双眼鏡を取り出して海を覗く。
「っ、で、でけえ! 大型の海王類だ!」
「何やってんだ? ケンカか?」
「死んだ…! 何かにやられたぞ!」
「えっ、あのでけえのが?」
「相手の生物は見えなかった。恐ろしい海だ…」
シャチとペンギンがそんな会話をしているのを聞き、俺は持ち運んでいる狐の面をつけた。俺が狐の面をつけるのと同時に、人が海面から出てくる。出てきたのは〝冥王〟レイリーだった。
「おお、君たちか。シャボンディ諸島で会ったな」
「か、海賊王ロジャーの副船長!」
「いやいや、船がしけで沈められてしまってね。泳ぐ羽目になってしまった」
「しけ? カームベルトは常に凪しかない、穏やかな海のはず。しけはねえぞ!」
「ってことは、もっと遠い海で遭難して、ずっと泳いできたのか!?」
驚いている俺たちを他所に、レイリーは自分の濡れた服を絞りながら「平泳ぎは得意だ」なんて言う。さっき海王類とケンカしていたのもレイリーだ。やっぱ老兵じゃねえじゃん、この人……。
「ああ、そうそう。ルフィくんがこの島にいると推測したのだが…」
レイリーはそう言い、俺たちに視線を向ける。
「まさか、」
「海軍は関係ない。私個人の憶測でここに来たんだよ」
「……そうか」
「ルフィくんのことはどうか私に任せてくれないかな?」
レイリーはローを見て言った。ローは小さく息を吐く。
「2週間は安静にしろと麦わら屋に言っておけ」
それだけ残して、ローは船に戻っていく。それに続くようにクルーたちも船に戻っていく。
「君は戻らないのか?」
「……ルフィに、もう一つ伝言を頼んでもいいか?」
「あぁ」
「ありがとうございます。自分の体を粗末にするな、次やったらぶん殴る、って」
「はは、わかった。伝えておこう」
俺は軽く会釈をしてその場を去る。
これでよかったんだと思う反面、やっぱり心残りはある。もう一度ちゃんと会っておきたかったけど、仕方ない。また会えるだろうしな。
船に戻り、ローのいる所へ足を運ぶ。俺が入ってから少し、船は海底を進み始める。
「ジェディ」
名前を呼ばれ、振り返るとそこにはローがいた。
「あ、ロー」
「寝ろ」
「開口早々それかよ…」
「一人になりたいんなら俺の部屋のベッドを使え」
「いや、さすがにそれは……」
いくらなんでも図々しすぎる。
そう思っていたのだが、ローは俺の腕を掴み、そのまま引きずっていく。
いやいや、俺の意思は!? そう思いながらも、ローのベッドに放り投げられてしまった。
そして俺の上から毛布が降ってくる。
「わぶっ、ちょっ、ロー!」
「ここ数日まともに寝てねえだろ」
椅子を引き、ローが座る。まさか、俺が寝るまで見てるつもりか…?
「お前はよく俺に強情だなんだ言うが、お前も大概だぞ」
呆れたような声色で言われ、俺は押し黙る。ローの手の平が俺の目元を覆う。その手を退けようと思ったが、俺は素直に従うことにした。
疲れていたせいもあるかもしれないが、俺はすぐに眠りについた。