テラーノベル
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「あ”ーー……」
疲労感に襲われ、小さく呻きながら背もたれに体を預ける。
レコーディング、終了。
流石に通しでやりすぎたかな。
床に置いてあったペットボトルを手にして椅子を立つ。
思いっきり伸びをすれば、人間から鳴っては行けない音が。
深く溜息をついて、ペットボトルの水を口に流し込む。
幸せを見逃しちゃう、なんて歌詞を書いた張本人ではあるけど今日ばかりは見逃して欲しい。
ブースを出ると、床に座ってギターを鳴らす若井の姿が目に入った。
見るだけでちょっと元気になるかも、とか。
相当やばいな、俺。
此方の視線に気づいたのか、ギターを爪弾く手を止めて顔を上げる。
「ん、終わった?お疲れ様」
そーだよ。お疲れだよ、元貴君は。
声聞いたら甘えたい欲、出てきた。
ねぇ、癒してよ。
黙って若井の顔を見つめると「え、なに」
と困惑した様な声が返ってくる。
「いや?お疲れの元貴君を癒してくれる人は居ないかなーって。」
「なにそれ。笑」
視線は動かさないままそんな事を言えば
呆れたように若井が笑う。
でもその声色は何処か優しくて。
尚更触れたくなりましたけど。
どうしてくれんの。
「俺、疲れたんだけどなー」
床にしゃがみこんで、わざとらしく表情を作ってみる。
「分かったってば。笑」
「若井君は疲れたボーカルを癒してくれないんですか」
「えー…」
じっと見つめ続けていると、観念したように若井がギターを置いた。
「仕方ないなぁ……ほら」
少しだけ恥ずかしそうに小さく腕を広げる姿が、どうしようもなく愛おしくて。
思わず緩んだ口元を隠すように若井に身体を預けて、背中に腕を回した。
「……いい匂いする」
「ちょっと。笑」
肩口に顔を埋めて目を閉じると、優しく背中を撫でられる。
伝わる体温も、匂いも、心臓の音も。
その全てが心地良い。
ほんと、好きだなぁ。
喉まで出かかった言葉は、口にするには
何となく気恥ずかしくて。
言葉にする代わりに、ほんの少しだけ。
ほんの少しだけ、若井を強く抱き締めた。
初めまして、いちと申します〜
ほんとに書きたい時に書きたいものを、って感じなのでクオリティも投稿頻度も保証できませんが
少しでも皆さんの供給になれたらいいなぁと思ってます…!
❤️💙のみになると思いますが、リクエストも大歓迎です〜!
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