テラーノベル
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食欲でない(笑)
カチャリ、と静かな音がして、部屋の気圧が変わった。
太宰の鼓膜を震わせたのは、待ち焦がれた、そして死ぬほど恐れていた主の足音。 「……っ、ちゅう、や……?」 ぐっしょりと汗と涙に濡れ、ソファの上で丸まっていた太宰が、縋るように顔を上げる。その瞳は焦点が合わず、ただ光を求めて彷徨っていた。
中也は無言でソファの傍らに立つと、括り付けられた太宰の手首を、ゆっくりと解いた。自由になったはずの両手は、しかし力なくシーツに落ちる。自分で動かす気力さえ、今の太宰には残っていなかった。
「……随分と、お利口に待ってたじゃねえか」
中也の手のひらが、太宰の火照った頬を包み込む。その体温が、冷え切った太宰の理性にとって、最後の引き金となった。
「ぁ、……あ……っ、ちゅうや、……ちゅうやぁ……っ!」
太宰は中也の首に、折れそうなほど細い腕を必死に回した。しがみつき、その胸に顔を埋めて、子供のように声を上げて泣く。 そんな太宰を、中也は愛おしそうに、そして征服欲に満ちた瞳で見つめ、ようやく、呪縛を解くような「ご褒美」を与え始めた。
「……いいぜ。もう、全部許してやる」
それは、先程までの苛烈な焦らしが嘘のような、至高の愛撫だった。 中也の指先が、太宰が最も欲していた場所を、迷いなく、深く、蹂躙するように突き上げる。
「あ、……っ、……ぁぁあああああっ!!?」
太宰の背中が跳ね、視界が真っ白に弾けた。 今まで極限まで堰き止められていた熱が、一気に決壊して全身を駆け巡る。中也の指が動くたび、太宰の脳内には甘い痺れが火花のように散り、思考という思考が真っ白に塗り潰されていく。
「……あ、……ぅ、……とけ、ちゃう、……とけちゃうよ、ちゅうや……っ!!」
太宰は掠れた声で、うわ言のように繰り返した。 筋肉も、骨も、そして積み上げてきた自尊心も。中也の与える圧倒的な熱量と、溜め込んだ絶頂の予感によって、ドロドロの蜜のように溶かされていく感覚。
「溶けろよ。……溶けて、俺の形に混ざりゃいいだろ」
中也は太宰の唇を乱暴に奪い、溢れ出す喘ぎ声をすべて飲み込んだ。 ご褒美の時間は、まだ始まったばかりだ。 太宰は中也の腕の中で、幸せな絶望に身を委ね、ただひたすらに、甘く、深く、溶け落ちていった。
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