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あれから私たち二人は生きている。
なんもしていない。ただただ生きているだけだ。
先生が私の喉にハサミを突きつけて、ああ、やっと死ねるんだ、先生に殺されるなんて本望じゃないか、と考えていたのも束の間、私の話が余程つまらなかったのかそのままハサミをどっかに投げてまた横になってしまった。
この古い家で、腹が減ったら先生が車で適当になんか買ってきてくれて、食べて、寝て、の繰り返し。いつもより生きてるということが何故か実感出来る…気がする。
そういえば私は今まで無計画でここまで来たのだけれど、どうやって死ぬつもりだったんだろう。先生も、どうやって死ぬつもりなのか。いや、先生は死ぬつもりなんてないのか?死にたいとは言っていなかった。ここが終の住処ということはヨボヨボのジジイになるまでここに隠れているつもりなのか。わからない。
………今日も、雨だ。
雨の音が聞こえる。
やることも無く天井を見上げ、2人で横になり、私は先生の手を握った。
「ねえ、先生。なんか面白い話してよ。」
「んーーー、そうだねぇ。」
「はやく。」
「…ここには昔俺の親父と母親と俺の3人で住んでいたわけなんだが、それはもう家族仲最高で平和に毎日過ごしていたんだよ。家を見てもらえれば分かると思うけど、まあそんな金持ちではなかったんだけどな。でも俺を私立の理系の大学まで出してくれて…金かかるのに。教師になる夢もめちゃくちゃ応援してくれてたよ。んで、大学の頃付き合っていた彼女がいたんだけど、その彼女がこの家結構気に入ってさ、いつかここに親父と母親と一緒に住んで畑でもやりながらのんびり過ごしたいとかなんとか言ってたのよ。」
「なんだよ、急に饒舌になったな。びっくりした。」
「そんなこんなでここは想い出の場所なんだよ。」
「オチもクソもねーな。なんでじゃあ今ここに誰も住んでいないの?」
「…さぁなー。」
「……つまんない。」
私は先生の方を向いて繋いでいた腕に抱きついた。先生は仰向けのまま目を閉じて動かない。死んでいるみたい。
「先生は結局悪い人なの?」
「うん。そうだよ。今もムラムラして死にそう。……だから離れてくんない?」
「いやだ、私、先生が好き。」
「……。あぁ、若いって、いいなぁ。」
「先生だって若いじゃん。まだ30にもなってないでしょ。」
「ガキにはわかんねーよ。30手前の男の気持ちなんぞ、お前に分かられてたまるもんか」
今日もくだらない話をして、また一日が終わる。死ぬ前に私はやりたいことが出来た。「先生とセックスをする。」これを目標に日々生きようと思う。今日の夜は何を食べるのかな。
ねえ、先生。そう言えば中学生の私と2人でこの家に住むのって、犯罪じゃない?