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1時間目が終わると、美優がすぐに咲の席へやってきた。
「ねえ咲、昨日さ、なんかあったでしょ?」
机に肘をつき、にやにや顔でのぞき込んでくる。
「……べつに。ちょっと疲れてただけ」
曖昧に笑いながら返すと、美優はさらに追及してきた。
「もしかして、お兄ちゃんの友達? あの――大学生の一ノ瀬さん?」
その名前を聞いた瞬間、心臓が跳ねる。
返事をする前に頬が熱くなるのを感じ、咲は慌てて視線をそらした。
「やっぱり! だってかっこいいもんねぇ。兄友であんな人、ずるいって」
美優の無邪気な笑みに、咲は小さく唇を噛む。
「……ただの兄友だから」
そう口にした自分の声は、思った以上に弱々しかった。