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昼休み。
教室のざわめきの中で、お弁当を広げながらも、咲の頭の中は昨日の夕暮れから抜け出せずにいた。
――ただの兄友。
そう言い聞かせたのに、心はちっとも納得してくれない。
ふと視線を上げると、窓際で笑い合うクラスメイトの姿が目に入った。
友達同士で、自然に肩を寄せ合う距離感。
その何気ない近さが、どうしてもまぶしく映ってしまう。
「咲ー? 聞いてる?」
美優が頬をふくらませて呼びかける。
「あ、ごめん!」
慌てて返事をすると、美優は呆れ顔でため息をついた。
「ほんとに何もないの? そういう顔じゃないんだけどな」
言葉に詰まる咲は、視線をお弁当に落とした。
胸の奥で、答えの出ない鼓動だけが響いていた。