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「……二人にだけはお付き合いのこと話していて。すいません、なんだか……」
矢代チーフと一緒に入ったカフェレストランで、少し心苦しいような思いで、そう伝えた。
「いや、いいよ。こうして君と二人では、ランチには出にくいからな。ありがたく思ってる」
彼からの返事に、ほっと胸を撫で下ろす。
「実は、私もです。ちょっと照れますけど……。アミとエミには、後でお礼言っておきますね」
「ああ、僕からもな」
言う彼と、二人で笑い合う。こんな機会を作ってくれたアミとエミには、感謝しかなかった。
「……そうだ、せっかくだから今度の旅行先を決めようか?」
ランチの先付けのサラダを食べながら、矢代チーフが口にする。
「ああ、いいですね」
頷いて返すと、チーフがスマホで旅行サイトを開いてテーブルに置いた。
「どこがいいか?」
「そうですね……温泉と、美味しい食事もあれば、最高ですよね」
「うん、いいね。食事が美味い温泉旅館で検索をしてみるか」
二人で顔を寄せ合い、スマホの画面を眺めた。
「……ここなんか、いいかもな」
「いいかもですね、ここ」
決して大きくはないスマホ画面を、顔を突き合わせて覗き込んでいたおかげで、お互いの額が触れ合った。
「……君とこうしていると、まだ午後からも仕事だということを忘れてしまいそうだ」
付き合う以前には仕事一筋のようにも感じていたチーフのらしからぬセリフに、思わずクスリと小さく笑うと、「私も……。ずっとこうしていたいくらいです」と、今は一筋に愛情をくれる彼へ微笑んで返した……。