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サイトを見て二人で決めた、矢代チーフとの初めての旅行の当日──
私たちは、電車を乗り継いで、地方にある温泉地へと向かっていた。
電車の二人掛けのシートに隣り合って座っているとどうにも緊張しそうで、少しだけ座る隙間を空けていたら、「もっとこっちへおいで」と、耳元に声が吹き込まれた。
「で、でも……、」
けれど自分からはなかなか彼のそばに寄れないでいると、「ほら、嫌じゃないなら、もっと僕にくっついて」と、腰に回された腕でグッと抱き寄せられた。
彼とぴったりと密着すると鼓動がドキドキと高鳴って、心臓の音を聞かれちゃうんじゃないかと感じる。
「緊張してるか?」
彼に尋ねられて、こくんと頷く。
すると、「……緊張してるのは、こっちも同じだから」と、チーフがぼそっと口にした。
「えっ、チーフも?」と、ちらりと横顔を盗み見ると、耳が薄っすらと紅くなっているのが映った。
(ほんとだ……。矢代チーフが、私といて、赤くなってる)
そんなちっちゃなことも、ただ幸せで……。
憧れだった彼とこうして一緒にいるだなんて、なんだか夢みたいにも思えてくるようだった……。