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なぎ
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ゆき
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朝。
すちは目を覚ました。
見慣れない天井。
一瞬、どこにいるのか分からなかった。
すち「……あ」
昨日のことを思い出す。
父親とは別に暮らすことになった。
今は、母親と二人。
すちは布団から起き上がった。
隣の部屋から声が聞こえる。
母「すち、おはよう」
すち「……おはよう」
すちは台所へ向かおうとする。
母「すち?」
すち「ん?」
母「どこ行くの?」
すち「朝ご飯、作る」
母親が少し驚いた顔をする。
母「いいよ」
すち「……え?」
母「今日はお母さんが作るから」
すちはその場で止まった。
すち「でも……」
母「いいの」
すち「……うん」
すちは椅子に座った。
でも、落ち着かない。
手持ち無沙汰で、何度も時計を見る。
母「どうしたの?」
すち「……何もしなくていいって、変な感じがする」
母親は少し黙った。
母「今まで、ずっと何かしてたもんね」
すち「……うん」
母「でも、何もしなくていい時間もあっていいんだよ」
すちは返事をしなかった。
朝ご飯が並ぶ。
母「食べよ」
すち「……いただきます」
すちは少しずつ食べ始めた。
母親は何も急かさない。
「早く食べて」
「片付けて」
「次はこれをして」
そんな言葉がない。
それが、逆に落ち着かなかった。
食べ終わると、すちは食器を持って立ち上がる。
母「置いといて」
すち「……でも」
母「今日はお母さんがやるから」
すち「……うん」
すちはまた座った。
膝の上で手を握る。
その日の昼。
スマホが鳴った。
らんからだった。
らん『すち、今日どう?』
少しして、こさめからも届く。
こさめ『体調大丈夫?』
なつ『ちゃんと食べた?』
いるま『無理してねぇか』
みこと『今、話せる?』
すちは画面を見つめる。
しばらくして。
すち『うん。大丈夫』
送信する。
すぐに返事が来た。
らん『ほんと?』
すちは少し考える。
いつもなら。
「大丈夫」と言えば、それで終わる。
でも。
昨日、みんなに見られた。
自分が「帰りたくない」と言ったことも。
父親に「休みたい」と言ったことも。
全部。
すちは少しだけ指を動かす。
すち『……昨日よりは、楽』
送信。
五人から、一斉に返事が来た。
こさめ『そっか』
なつ『よかった』
いるま『ならいい』
らん『無理すんなよ』
そして。
みこと『よかった』
すちは、その一言を見つめた。
胸の奥が、少しだけ温かくなる。
でも。
(……これって、なんだろう)
すちはスマホを伏せた。
「好き」は、まだ分からない。
でも。
昨日までとは、少し違う。
母親がキッチンから声をかける。
母「すち、お茶飲む?」
すち「……飲みたい」
言ったあと。
すちは少し驚いた。
自分から「飲みたい」と言った。
母親は笑った。
母「うん。じゃあ持ってくるね」
すちは小さく頷いた。
すち「……ありがとう」
コメント
1件
うわあ、すちの「何もしなくていい時間」に戸惑う感じ、すごくリアルで胸がぎゅっとなりました……。ずっと気を張ってた反動ですよね。でも最後に自分から「飲みたい」って言えたのが、小さくて大きな一歩だなあって。友達の「大丈夫?」も一気に来て、ちゃんと見てくれてるんだなって安心しました。碧さんの描く空気感、すごく好きです🌷