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なぎ
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ゆき
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数日後。
すちは母親と一緒に暮らしていた。
朝ご飯を食べて、学校の準備をして。
前と同じような朝。
でも、ひとつだけ違う。
父親の声がしない。
母「すち、忘れ物ない?」
すち「うん。大丈夫」
母「じゃあ行ってらっしゃい」
すち「行ってきます」
玄関を出る。
少しだけ、足が軽かった。
学校に着くと。
らん「すち!」
遠くかららんが走ってくる。
すち「らんらん」
らん「おはよ!」
すち「おはよ」
その後ろから、こさめ、なつ、いるま、みことも来る。
こさめ「すっちー!」
なつ「久しぶり!」
いるま「……顔色、前よりマシだな」
すち「そう?」
いるま「ああ」
みことがすちの顔をじっと見る。
すち「……なに?」
みこと「いや」
少し間を置いて。
みこと「ちゃんといるなって」
すち「なにそれ」
すちが笑う。
五人も笑った。
教室へ向かう途中。
らんがすちの隣を歩く。
らん「昨日、ちゃんと寝た?」
すち「寝たよ」
らん「ご飯は?」
すち「食べた」
らん「ほんと?」
すち「ほんと」
こさめ「じゃあ今日は大丈夫だね!」
すち「うん」
その言葉を口にして。
すちは少しだけ考えた。
「大丈夫」
いつもなら、誰かに心配されたくなくて言っていた。
でも今日は。
本当に、少し大丈夫だった。
昼休み。
六人で机を囲む。
なつ「すち、何食べてるの?」
すち「これ」
こさめ「それ美味しい?」
すちは箸を止める。
一瞬だけ。
昔なら、ここで困っていた。
「好き?」と聞かれるのと同じように。
でも。
すち「……うん。美味しいよ」
こさめ「お、珍しい!」
すち「何が?」
こさめ「すっちーが即答した」
すち「そう?」
いるま「そうだろ」
みことが笑う。
みこと「じゃあ、俺もそれ食べてみようかな」
すち「いいよ」
みことがすちの弁当から一つ取る。
みこと「……うん、美味い」
すち「でしょ?」
自然に出た言葉だった。
みことがすちを見る。
すちも見返す。
その瞬間。
胸の奥が、また少しだけ変な感じがした。
(……なんだろう)
でも、すちは深く考えなかった。
放課後。
六人で学校を出る。
らん「今日どっか寄ってく?」
なつ「いいじゃん!」
こさめ「行きたい!」
いるま「俺も別にいい」
みことがすちを見る。
みこと「すっちーは?」
すちは少し考えた。
家に帰っても、今日は急いで何かをしなくていい。
母親も待っている。
だから。
すち「……行きたい」
五人が一斉にすちを見る。
すち「……何?」
らん「いや」
らんが笑う。
らん「なんか、すちが自分から言うの珍しいなって」
すちは少しだけ笑った。
すち「……そうかも」
みんなで歩き出す。
その中で、みことが自然にすちの隣に並んだ。
すちは気づいていた。
でも、何も言わなかった。
ただ。
隣にいることが、嫌じゃなかった。
コメント
1件
読み終えたわ……めっちゃじんわりきた。 この話、大きな事件は何も起きないけど、すちの“ちょっとだけ変わった”がちゃんと伝わってきた。「大丈夫」が糊口から本物に変わってるの、すごくいい。みことの「ちゃんといるな」も刺さったし、最後に隣を嫌じゃないって思えるようになった過程が丁寧に描かれてて、この日常がすごく尊い。碧さん、こういう細かいトーンの変化、本当にうまいなあ。