テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#魔入りました入間くん
ツナツナビール🍺
51
10
164
76
昔から、世界は吐き気がするほどの色で溢れていた。誰を見ても、眩しくて痛くて、真面目に生きていたら頭が狂ってしまいそうなほど、色を放っていた。そんな世界でわたしは、色がなかった。存在しているだけの、ただの置物に過ぎなかった。だから、その色から目を背けるしか無かった。立ち向かうと、壊れてしまう。自分を偽って、演じて、必死に世界に食らいついてきた。生きる理由も死ぬ理由もないのに、何もないのにただ、しがみついてきた。だが、それではいけないのだと知っていた。毒なのは、この色たちではない。私自身なのだ。
いつものように、吐き気のする世界から目を背け、歩いていた。そこへ、私の体に光が差し込んだ。見上げると、そこには眩しすぎるくらいのひとつの手が差し伸べられていた。手を取らずには居られなかった。何百年と生きてきて初めて、心地の良い光だったのだ。わたしは初めて、あたたかさを知った。
それから、世界の色は少しだけ形を変えた。
まだ眩しくて、まだ痛くて、まだ怖い。 それでも、以前のように吐き気がするほどではなくなった。突然、私は出会った。痛くない、思わず見ていたいとまで思ってしまう色に。その色はとても優しくて、不器用で、厳粛な色だった。その色に惹かれてしまった。つい、後を追ってしまった。色の見え方、光の感じ方、全てが今までと違って見えた。そして、 自分にも色があるのだとわかるようになった。段々と、私にも存在だけではない色が増えていった。あの色のせいで、たくさんの見たくなかったはずの、気色の悪かったはずの色が心地よくなっていっていた。
だが、本質が変わる訳ではない。世界から浮き彫りの存在。やはり、演じずには居られない。普通を、偽らなければ。色づいてしまった自分を隠すために。いつだって、あいつらは私の事を監視している。色をもってしまった毒がどれほど危険なのか、世界は知っている。
いつか、何も気にせず、ただ愛し、存在していくことができる日が来るのだろうか。そう願わずにはいられない。愛する人と私は、これからも少しずつ生きていたい。
存在してはなかったはずの、存在してはいけなかったわたしが、生きていたいと思えた、そんな馬鹿げた御伽噺だ。
コメント
1件
ああもう…読み終わってしばらく呆けてたよ😭✨ 「色」のメタファーがずっと重くて痛々しいのに、光みたいな手に出会って少しずつ温かくなっていく描写が美しすぎた…。 「生きる理由も死ぬ理由もない」って語るところから、最後の“御伽噺”って締め方まで、もうずっと胸が締め付けられた。 この出会いがこれからどう色を変えていくのか、続きが気になりすぎるよ…!🌸