本鈴が鳴る少し前に、教室に着いた。
間に合ってよかった…。
それにしても、すごく視線を感じた…。
かっちゃん、生徒会長だしなあ…。
そ、それとも、やっぱり僕が悪目立ちしてるせいなのかもっ…!
「出久の席どこ?」
教室に着くなり、聞いていたかっちゃん。
「ここだよっ」
そう言って自分の席を指さすと、かっちゃんはなぜか僕の隣をすわる男の子の方へと歩いていった。
麗日さんとは逆隣のその男の子は、かっちゃんを前になぜか顔を真っ青にしている。
「…おいお前。俺と変われ」
「は、はいいっ…!」
即答すると、荷物をまとめて別の席へと走っていったその男の子。
「出久!これで隣の席だな!」
笑顔のかっちゃんに、僕は苦笑いを浮かべた。
「え、えっと…う、うん!」
いま、完全に脅したよね…?
こ、こんな感じで勝手に席替えして、いいのかな…あはは…。
わからないけれど、かっちゃんがうれしそうだから言いづらいっ…!
とりあえず、僕は自分の席に着いた。
「ずいぶんと懐いてるみたいやけど、二人知り合いなん?」
隣の席の麗日さんが、笑顔で聞いてくる。
あっ…そうだよね、突然出ていったから…。
僕とかっちゃんの関係なんて、他の人は知る由もないだろうし。
「出久に気安く話しかけるな。この丸顔」
「まっ…!?」
答えようとした矢先かっちゃんが先に口を開いた。
「かっちゃん…!そんな言い方したらだめだよ…!」
威嚇するような言い方を注意する。
「わ、わりい…」
素直に謝ってくれたかっちゃんは、しゅん…と肩を落とした。
もしかっちゃんに犬のような大きな耳が生えていたら、ぺたんと垂れ下がっていただろう。落ち込んでいるかっちゃんに、若干の罪悪感を抱きながら、麗日さんに返事をする。
「僕とかっちゃんは幼なじみなんだ」
僕の言葉に、麗日さんは驚いた様子でいった。
「へー!それで仲いいんやね」
「うん!」
かっちゃんは僕にとって、もはや友達というより家族のような存在。
「爆豪くん、今日は授業受けるん?」
「あ?」
麗日さんが、僕を挟んでかっちゃんに声を掛ける。
かっちゃんはまた、話しかけるなとばかりにガンを飛ばしていて注意をしようかと思ったけど、それよりも麗日さんの言葉が気になった。
「『今日は』って…?」
どういうこと…?
まるで、かっちゃんがいつもは授業に出ていなかったみたいな言い方…。
「爆豪くん、いつもサボって…」
「何もないよ出久。こいつの話は無視していいから」
何か言いかけた麗日さんの言葉を、かっちゃんが遮った。
不思議に思いかっちゃんの方を見ると、何やら額に冷や汗が。
一体何に焦っているんだろう…?
「いつもは…何?」
「い、いつも、真面目に授業受けてるに決まってるよ」
はは…と、乾いた笑いをこぼすかっちゃんを不思議に思いながらも、そっかと納得した。
「かっちゃんはみんなと仲いいの?」
麗日さんや、轟くんとは…。
「俺は馴れ合わねえし」
かっちゃんよりも先に、轟くんが言った。
「うーん、爆豪くんには基本的に話しかけても無視されるから、好かれてはないかな。まず爆豪くんと話す機会がなかったと言うか…基本的に教室にいな——–」
「お前、それ以上余計なこと言ったらどうなるか知らねーぞ」
再び、かっちゃんが麗日さんの話を遮った。
さっき以上に殺気のこもった視線を向けられた麗日さんは、全く動じることなく「あはは」と笑っている。
「普通のクラスメイトだ」
かっちゃんの答えに、「そっか」と頷いた。
あんまり仲がいいわけじゃないのかな?
でも、轟くんはかっちゃんと仲良くしたいみたいに見える。
っていうより、興味があるって感じかな…?
「クラスメイトだとは思ってくれてたんだな」
「それ以外に何があんだよ。つーか気安く話しかけんなその顔面崩してやろーか」
「はっ、怖い怖い。そうなったら、緑谷に手当てしてもらおうかな」
「テメエ…」
軽くあしらっている轟くんと、本気で怒っている様子のかっちゃん。
一見ハラハラする状況なのかもしれないけれど、僕はなんだか笑みが溢れた。
「ふふっ」
「どうしたん?」
笑った僕を、不思議そうに見つめている。
そうだよね、笑うなんて変だよね…けど、安心したらなんだか気が緩んじゃったというか…。
「友達できるかなって不安だったから…うれしくて」
かっちゃんと再会できて、しかも優しい麗日さんと隣の席に慣れて…ホッとした。
「…っ」
自然と笑みがあふれる僕を見て、轟くんが目を見開いた。
心なしか赤く染まっている頬を見て、首を傾げる。
「轟くん?」
どうしたんだろう…?
「い、いや、何でも…」
轟くんはそう言って、口元を手で隠した。
「かわいいとか、やべえな俺…」
ん?何か言った…?
「うちでよかったら、仲良くしようね!」
聞き返そうとしたけれど、それよりも先に麗日さんが言った。
「うん!」
笑顔で頷くと、後ろからかっちゃんに頭をぽん、と優しく叩かれる。
「出久、俺と仲良くしよう。こいつとはしなくていいから」
「ええっ」
かっちゃんは、麗日さんとあんまり相性が良くないのかなあ…。
前の席で話している僕たちを見て、後ろの轟くんが面白くなさそうに呟いた。
「俺はごめんだ。仲良くする義理もない」
轟くんからは、少し嫌われているみたい…あはは。
苦笑いを返すと、隣から殺気が。
かっちゃんが、これでもかと鋭い視線で轟くんを睨みつけていた。
「…おまえ、出久の事キズつけたらわかってんだろうな?」
「っ…」
「か、かっちゃん落ち着いてっ…!」
今にも殴りかかりそうなほどの殺気を放っているかっちゃんを、なんとかなだめて落ち着かせる。
色んな意味で…賑やかな学校生活になりそうだな…。
コメント
1件
やっぱ最高です!!リアルでいい意味の(?]奇声出ちゃいました!!出久君いつ正体を明かすのかまじ楽しみ、、、😆✨