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渡辺side
いつ、何がきっかけで、どうして、なんてことはもう分からないけど、こんな関係になる前からずっとずっと大好きだった
「もう俺だけにしてよ」
いつもみたいにあべちゃんの部屋でした後、携帯を構っていたら、ふいに言われた
思わず動きが止まる
(あぁ、やっぱり)
初めてした時からなんとなく分かってた
あべちゃんは、俺が何人もの相手をしていると思っているんだろうなと
見ないようにしてた事実を突きつけられて
そのことが少し悲しくて、じわりと涙が滲む
長い前髪が鬱陶しかったけど、顔を見られないようにそのままにする
(でも、これを言うってことは……)
嫌ってことだ、俺に他に相手がいるかもしれないことが
それは、つまり
(いや、でも、期待するな)
だからって好きになってくれたとは限らない
ここで期待して、別に好きとかじゃなくてただの独占欲だなんてオチになったら、立ち直れる気がしない
注意深く質問を重ねていけば、メンバー全員と関係を持っていると思っていたとハッキリ言われて、ショックを受ける
(きっつ……)
もう聞きたくなくて話題を終わらせる
阿部ちゃんの体温が隣にきて、部屋の明かりが消える
こんなに酷いことを言われてるのに、それでもやっぱり大好きで
つい、行為中以外はあまりしないキスをねだる
「ね、キスして」
(あべちゃん、好きなの)
「いいけど、してる時以外に珍しい」
「たまにはいいでしょ」
(だって君の好きが欲しい)
「深いやつ?」
「うん」
(君がつけた傷は君が癒して)
舌を絡めてゆっくりとキスをされる
この体温がやっぱり大好きで嬉しい
傷ついた心が少し暖かくなる
「……ん、ありがと。おやすみ」
「うん、おやすみ」
初めて抱かれたあの日に、ちゃんと好きだと言えてたら、この数年間の2人の関係性は変わってたのかな
練習の休憩中
佐久間とふっかがこそこそと話してくる
10代も残り僅か
まだ若いとは言えジュニア歴も長くなってきている
同年代のグループがデビューしていく中、俺らはデビューではなく再結成を告げられた
身体能力を買われて、舞台に上がる機会は多く、顔や名前は覚えられていく
成長とともに高まる性欲と、まだ希望を捨てていないとはいえ、デビューできないフラストレーションが溜まる
でも外で発散するわけにもいかなくなっている状況に、メンバー内で感情なしの関係性が始まったのは、ここ最近のことだ
ずっとあべちゃんが好きだった俺はその話に乗るつもりもなく、そこに彼が加わるのも嫌だった
幼馴染にそれを伝えれば、うまく伝えてくれたらしく、その関係性は4人の中だけで回っていた
あべちゃんとだったら、まぁ別にいいかな、なんて考えていたことが現実になるなんて思ってもみなかった
でもそのせいで、長年苦しむことになることも、その時は分かっていなかった
「腰いった」
「え?ふっかもしかして昨日?今日の練習ハードだってわかってたじゃねぇか」
「そうなんだけどさ〜、溜まってたんだって」
「涼太はピンピンしてんな。今日俺約束してるんだけど」
「え?まじ?すげぇな。どこで?」
「20時、俺の家」
「ねぇ、その話興味ないって」
「いいだろ、別に。あ、阿部ちゃんもお疲れ」
ちょうど阿部ちゃんが休憩に入ってきた
(今の聞かれたかな…俺、関係ないんだけど)
「あ、うん、お疲れ様。俺、飲み物買ってくるけど何かいる?」
「いや、大丈夫!ありがと!」
「俺も大丈夫」
「翔太は?それ、もうすぐなくなりそうじゃん」
「あ…じゃあ、お願いしてもいい?それか俺も行こうかな」
(どうせならあべちゃんといたいし)
「それくらい大丈夫だよ、買ってくるって。待ってて」
「……そっか、ありがと」
(……断られちゃった)
少しだけ気落ちしながらも、また3人で話していればあべちゃんが戻ってきた
「翔太、買ってきたよ」
「あ、ありがと」
これ幸いと、あべちゃんがこちらに来る前に立ち上がって寄っていく
手を出して受け取ろうとするも、あべちゃんがペットボトルを離さない
「……?」
伺うようにあべちゃんを見ると、真剣な顔をしていた
(……?怒ってる?)
「翔太、今日このあと暇?」
「え?うん」
「うち泊まらない?」
「え?………いいけど」
「じゃ、決まり。一緒に帰ろ」
「うん………」
(なんだろ……)
よく分からないままに、練習後にあべちゃんについていく
「急に行って大丈夫なの?」
当時、あべちゃんはまだ実家だった
「今日はみんな出かけてて、帰ってこないから」
「そうなんだ」
あべちゃんがいいと言うなら、これ以上言うことはない
「じゃあお邪魔します」
コメント
1件
ぅわーーーん!!健気で恋してて可愛いよおおおおおお💙💙