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キレルは今決闘場にいる。
本来は痔士同士が高め合うために作られた場所のようだが、何故か無駄な緊迫感が漂っている。まるで今からどちらかが死ぬと言われてるかの様な重圧感。キレルとしては今すぐにでも逃げ出したいほどのものだったが、他の痔士が見に来てるので無理そうだ。
「三本勝負で二本先取した方が勝ちだ。いいな」
「一回で良いのではないでしょうか」
「一回ではまぐれということもあるだろう!」
「無いです」
この街では言霊が使えない。だが痔士団の詰所がある以上はジセキが使えるはず。つまりキレルに勝ち目はない。ジセキは痔があれば容易に使えるほど甘いものではない。
「……」
キレルは今木刀を持っている。せめてもの情けとして寄越されたものだったが、ジーナは本物の剣を二本持っているため勝ち目はどう見てもない。ジセキも使われたら即お陀仏だろう。
「怠い……」
やはり隙を見て言霊を使い逃げるべきだろう。どうにかバレずに発動しなければ。
「っ!」
ジーナは一瞬で間合いを詰めてきた。二つの刃が振り下ろされキレルはそれを紙一重で躱す。しかしその後の連撃の速さに追いつくことは叶わず、反撃する隙のない防戦一方だった。勝利の可能性も浮かばない。
「参りました」
キレルはほんのわずかに目を逸らした瞬間やられた。
「参りました」
二戦目も瞬殺される。頬だけでなく服も破れ再度パンイチになった。
「……」
冷たい床に大の字で寝るのは中々に気分が良かったが、はっきり言って公開処刑のようなものである。だがキレルにプライドなんてものはないので逆に硬さが丁度いい。
「おやすみなさい」
「寝るな!」
キレルはボコボコにされた。
「あなたは決闘に負けたため、ジルベルトの命令に従うことになります」
「理不尽だよね」
キレルはパンイチで正座させられている。
「約束を違える方が問題があると感じませんか」
キレルの善意を問うかのように言うジーナ。瞥見すると見物客の痔士やジルベルトとその愛人はうんうんと肯定するかのように頷いている。彼らは一心同体のようだ。
「問題はないと存じます」
キレルだけはイレギュラーな存在。彼は全否定を試みる。
「ならば罪に問われることとなりますが」
どうやらキレルに拒否権は与えられていないようだ。言霊を使うだけで処刑される街であるならば罪に問われた途端あの世行きだろう。特に男であり特別体格の良くないキレルは可能性が高い。これは四面楚歌というべきか。逃げる方法が見つからなくて万事休す。
「あの……俺は別に面倒ごとを起こしたいわけではなく……ただキレジーザマーンの情報が知りたいだけで……」
ほぼ確実に言葉は通じないだろうが何とか下手に出て肯定を得よう大作戦。
「キレジーザマーン? あのティア0と呼ばれた凶悪な痔・エンド・モンスターのことですか?」
「俺の因縁の相手といいますか……少なくとも俺の目的は皆様のためになりますゆえ……見逃していただけると……」
「ならぬ!」
突如見知らぬ誰かの否定が轟き皆が顔を向ける。ジーナは驚いた表情で叫んだ。
「ジナオール様!?」
なんとそこにはジナオール伯がいたのだ。
赤色のコートを優雅に着こなし、お尻の文様が刻まれたバンダナを巻いている。
「奇妙な輩がいるという噂を耳にしてたな。身に来たのだが……やはり奇妙な奴だな」
ジナオールはキレルを馬鹿にするように大げさに笑う。その際お尻をぷりっぷりと激しく振り、底知れぬ艶やかさを周りへアピールしている。
「あなたも大概かと」
「何か言ったかパンツ一丁の不細工よ」
「あなたとは初対面の筈ですが」
この世には悪口を言う人間しかいないと勘違いするほどに人に恵まれないキレル。
「用件を聞こうか。それ次第で処刑するか決める」
「恐ろしゅうございます」
ジナオールは護衛をその場に留まらせると、キレッキレなダンスを披露しながらキレルに近づいていく。ちなみに痔士は皆ケツを突き上げるようにして土下座をしている。
ジルベルトの愛人は不法侵入としてたったいま首が飛ばされた。
「あjうぇにあうぃいrにあwんhんひなwhん!!!!」
ジルベルトは発狂した。
愛し愛された親愛なる愛人との未来の愛を断たれたのだ。仕方がないことかもしれない。だが相手は領主だ。その判断は愚の骨頂。
彼はジナオールに向かって走り出した。
「駄目だジルベルトッ!」
ジーナは止めようとするももう彼の怨嗟は止まらない。
「うおおおおおおお俺のジセキ発動ッ!」
ジルベルトのケツに光輪が現れ祝福される。
神が降誕したかのように眩く高貴な光を放ち、彼を聖母の如く慈しみ包み込んでいく。
「それは駄目だジルベルトッ!」
ジーナは泣きながら叫ぶもやはり止まらない、そしてその時は訪れた。
巨大な光が渦を巻き、ケツから何かが放たれた。
「うおおおおおおおッ!」
ジルベルトは苦悶の表情を浮かべながらも巨大な力を操っていく。このままではジナオールは強烈な脱肛で死に至るだろう。
護衛は駆けつけすぐに手をかざした。
巨大な防御シールドが展開され光線を真正面から受ける。轟音が鳴り響き護衛は徐々に後退していく。ディバイン・プロラプスが強すぎるのだ。それもそのはず。あれはジセキの中でも禁忌と呼ばれる強力なジセキだ。
「ジルベルト……そこまで……」
ジーナは膝から崩れ落ちた。まるで愛する者が命を賭した攻撃を放ったかのような態度だ。だがそれも後に分かる。
「うおおおおおおッ!」
「させるかぁぁぁあぁぁッ」
護衛の一人のシールドが破られ光に覆われる。
「ギヤアァァァァアッァアっ!」
一人は血まみれとなりすぐに別の護衛が入る。
別の防御ジセキが発動され、辺り一面をオーラが包み込んだ。ディア・スフィンクターは、肛門括約筋を極限にまで鍛えたものだけが操る事の出来る強力なジセキだ。ディバイン・プロラプスにも対抗できるかもしれない。
両者一歩も譲らぬ攻防。どちらが勝つか分からぬ手に汗握る命の削り合い。
キレルも固唾をのんで見守った。近づけば巻き込まれるから何も出来ない。
――そして時は進み
「ぐあああッ……!」
ジルベルトが倒れた。ズボンが赤く染まっていく。
「ジルベルトッ!」
ジーナが駆けつけるも、彼は既に息絶えていた。
「ジルベルト……」
ジナオールは漏らしたズボンをはき替えながらジルベルトの遺体を一瞥する。
「馬鹿な奴だ! ディバイン・プロラプスを使うとは! 敗血症だぞ!」
ディバイン・プロラプスはとてつもなく強力な力を秘めた攻撃ジセキだが、一度発動すれば術者の血中に“痔聖菌”が流れ込み、それが原因で敗血症性ショックを起こすリスクがある。これは神の痔核を召喚し力の源とするからの代償だ。痔の神は大いなる力には大いなる責任が伴うと仰っている。
「……」
だがキレルは思った。
一体今までの流れのどこにこの大技を使う伏線があったのだろうかと。